私の視線は、見たくないのに“ナニカ”から離れない。
スマホを持っている右手と、無意識の内に制服のスカートを握っていた左手は、じっとりと汗ばんでいた。
背中はスーッと冷たくなり、体中に鳥肌が立つ。
足裏は接着剤を塗られて固定されたように動かない。
その時– –“ナニカ”が、こちらへ手を伸ばした– –
「い…いやああああああ!!」
すると、自分でもびっくりするほど体が早く反応し、私は走り出した。
教室を飛び出し、パニックになりながらも無我夢中で走る。
な、なんなのあれ…!!
なんで私と同じ顔をしてるの!?
まとまらない思考でそう考えながらチラリと後ろを見ると– –“ナニカ”も私を追いかけていた。
「やだっ、来ないで!!!」
そう叫びながら角を曲がる。
すると、そこにあったのは女子トイレだった。
「っ…!」
私は素早くそこに入り、1番近くの個室に飛び込んだ。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
荒い息を整えていると、握りしめていたスマホから、『しずく…』と、遠慮がちな咲の声がした。
『ど、どうしたの…?』
「っ…さ、咲っ…!実はね、教室にさっきまでいなかったのに、人がいたの…!その人、私と同じ顔してたっ…逃げたんだけど、追いかけて来たの。それで私…今、女子トイレの個室にいる」



