男たちはどんどん片付けていき、樹と二人で買ったマグカップも箱に投げ入れられた
慌てて箱から取り出す日和
男:「ちょっと黒田さん、この人が…」
黒田:「おいおい、邪魔するなって言ったろ」
日和:「で、でも…これは大事なものなんです」
黒田はカップを取り上げ
黒田:「ごめんな、何一つ残さず処分するように上から言われてて」
日和:そ、そんな…ど、どうしょう……
震える手で樹に電話をかける日和
日和:樹くん、樹くん…お願いだから電話に出て!
「お掛けになった電話は現在電波の届かない場所におられるか、電源が入っておりません」
何度かけても樹に電話が繋がることはなかった
ふいにアドレスの和泉の名前が目にとまる
「何かあったら必ずオレに言え」
和泉の言葉を思い出す日和
試合に行くため駅のホームにいる和泉
舞香:「和泉、今日の試合も頑張ろうね」
和泉:「おう、任せとけ」
ブーブー…
和泉のスマホが鳴った
和泉:「日和?」
日和:「和泉くん助けてっ!」
チームメイトに説明もそこそこに走り出す和泉
舞香:「和泉っ!」
見たこともない和泉の焦る顔を見て、思わず腕を掴み引き留める舞香
舞香:「お願い…行かないで」
和泉:「…ごめん」
和泉は舞香の手を外し、勢いよく走って行った
次々に思い出の物が段ボールに投げ入れられていく
そしてついに写真たての裏に書かれたメッセージを日和が見ることなく段ボールに入れられた
その様子を震えながらも涙をこらえ、ただただ必死で立って見ている日和を見て黒田はため息をついた
箱詰めも終わり次々に運び出されていく荷物
最後の荷物を追ってマンションの外に出ると、トラックが停まっていた
日和が呆然とトラックを見つめていると
黒田:「ほら、これお嬢ちゃんのカバンだろ」
黒田は日和にカバンを手渡した
黒田:「あんた、鍵持ってるみたいだけど、これからは勝手に入ったら不法侵入になるから気をつけなよ」
そう言って黒田はトラックに乗り込んだ
ゆっくり走り出すトラックを日和は必死に追いかける
日和:嫌っー 持って行かないで
ドサッ…
つまづきこけてしまう日和
キキーッ
急にトラックが止まり黒田が日和のもとに駆けてきた
黒田:「お嬢ちゃん、これ」
そう言ってポケットから取り出し日和に手渡したのは、メッセージの書かれた写真たて
" 必ず迎えにくる "
日和:!!
樹のその文字を見た途端、我慢していた涙があふれ出した
黒田:「ホントはこんなことしたらいけないんだが、お嬢ちゃんの辛そうな顔見てたらつい……きっとあんたの大事な人、よっぽどの事情があったんだと思うよ」
黒田は口に指を当て内緒ねと日和に見せて去って行った
日和は泣きながら写真たてを抱きしめ、深々とトラックが見えなくなるまでお辞儀をした
