次の日の放課後。
帰る支度をしていると、陽斗がいつものようにわたしの隣へ来た。
「紬、ちょっと」
「……うん?」
「昨日の……続き、したい」
「っ……!」
昨日の“ちゃんと触りたい”が頭に浮かんで、心臓が跳ねた。
「続きって……髪……?」
「髪もだけど……」
陽斗は少しだけ目線をそらして
机の端を指先でとんとん叩いた。
「……次は、頬に触れていい?」
「――っ!!」
息が止まるって、こういうことなんだと思った。
「……ダメ?」
「だ、だめじゃないけど……」
「じゃあいいじゃん」
「よ、陽斗くん……教室だよ?」
「分かってる。でも誰もいねーし」
もうほとんどのクラスメイトが下校していて
部室に向かったり、昇降口に向かったりしていた。
教室の空気は静かで
わたしたちの声だけが響いていた。
「紬、こっち向いて」
「……恥ずかしい……」
「じゃあ、向けるまで待つ」
じっと待たれるのも恥ずかしくて
わたしはゆっくり顔を上げた。
陽斗の視線が、真っ直ぐわたしに向く。
「……触るよ」
その宣言だけで
背中がびりっと震えた。
陽斗の手が近づいてくる。
指先がわたしの頬に触れた瞬間――
「……っ」
息が勝手に吸い込まれた。
「あ……やば……」
「よ、陽斗くん……?」
「紬の頬……柔らかすぎ」
陽斗は笑っているのに
その瞳はどこか真剣だった。
親指でそっとなでるように
頬を滑らせる。
「……あったか」
「陽斗くん……近い……」
「近づいてるんだよ。わざと」
「っ……!」
陽斗はもう片方の手で
わたしの髪を耳の後ろに流しながら、低くつぶやいた。
「なぁ、紬」
「なに……?」
「ここさ……」
頬の同じ場所を、まるで印をつけるみたいにそっと触れる。
「キスすんのに、一番いい高さだと思わね?」
「よ、陽斗くんっ……!」
わざとじゃない。
でも明らかに照れさせにきてる。
わたしが耐えきれずに顔をそむけると
陽斗は指を軽く添えて、そっと正面に戻した。
「逃げんの禁止」
「無理……」
「無理じゃねぇ。俺が止めるから」
声が甘すぎる。
「……紬ってさ」
「うん……?」
「触るたびに、もっと触りたくなる」
その瞬間、胸がぎゅっと縮まった。
「次……どこ触ってほしい?」
「え……」
「言ってくれたら優先する」
「そ、そんな……!」
「じゃあ俺が決める」
陽斗は頬から指を離さずに
もう一度ゆっくりと撫でる。
その手つきが
恋人にしか向けない触れ方だった。
「紬、ほんと可愛い」
「陽斗くん……言いすぎ……」
「言わせろよ。彼氏だから」
頬に触れられているだけなのに
心は完全に持っていかれていた。
「……帰ろっか」
「うん……」
教室を出る前、陽斗が小さく付け足した。
「明日は……もっと触るかも」
「よ、陽斗くん!!!」
声が裏返ったわたしを見て
陽斗は楽しそうに笑っていた。
帰る支度をしていると、陽斗がいつものようにわたしの隣へ来た。
「紬、ちょっと」
「……うん?」
「昨日の……続き、したい」
「っ……!」
昨日の“ちゃんと触りたい”が頭に浮かんで、心臓が跳ねた。
「続きって……髪……?」
「髪もだけど……」
陽斗は少しだけ目線をそらして
机の端を指先でとんとん叩いた。
「……次は、頬に触れていい?」
「――っ!!」
息が止まるって、こういうことなんだと思った。
「……ダメ?」
「だ、だめじゃないけど……」
「じゃあいいじゃん」
「よ、陽斗くん……教室だよ?」
「分かってる。でも誰もいねーし」
もうほとんどのクラスメイトが下校していて
部室に向かったり、昇降口に向かったりしていた。
教室の空気は静かで
わたしたちの声だけが響いていた。
「紬、こっち向いて」
「……恥ずかしい……」
「じゃあ、向けるまで待つ」
じっと待たれるのも恥ずかしくて
わたしはゆっくり顔を上げた。
陽斗の視線が、真っ直ぐわたしに向く。
「……触るよ」
その宣言だけで
背中がびりっと震えた。
陽斗の手が近づいてくる。
指先がわたしの頬に触れた瞬間――
「……っ」
息が勝手に吸い込まれた。
「あ……やば……」
「よ、陽斗くん……?」
「紬の頬……柔らかすぎ」
陽斗は笑っているのに
その瞳はどこか真剣だった。
親指でそっとなでるように
頬を滑らせる。
「……あったか」
「陽斗くん……近い……」
「近づいてるんだよ。わざと」
「っ……!」
陽斗はもう片方の手で
わたしの髪を耳の後ろに流しながら、低くつぶやいた。
「なぁ、紬」
「なに……?」
「ここさ……」
頬の同じ場所を、まるで印をつけるみたいにそっと触れる。
「キスすんのに、一番いい高さだと思わね?」
「よ、陽斗くんっ……!」
わざとじゃない。
でも明らかに照れさせにきてる。
わたしが耐えきれずに顔をそむけると
陽斗は指を軽く添えて、そっと正面に戻した。
「逃げんの禁止」
「無理……」
「無理じゃねぇ。俺が止めるから」
声が甘すぎる。
「……紬ってさ」
「うん……?」
「触るたびに、もっと触りたくなる」
その瞬間、胸がぎゅっと縮まった。
「次……どこ触ってほしい?」
「え……」
「言ってくれたら優先する」
「そ、そんな……!」
「じゃあ俺が決める」
陽斗は頬から指を離さずに
もう一度ゆっくりと撫でる。
その手つきが
恋人にしか向けない触れ方だった。
「紬、ほんと可愛い」
「陽斗くん……言いすぎ……」
「言わせろよ。彼氏だから」
頬に触れられているだけなのに
心は完全に持っていかれていた。
「……帰ろっか」
「うん……」
教室を出る前、陽斗が小さく付け足した。
「明日は……もっと触るかも」
「よ、陽斗くん!!!」
声が裏返ったわたしを見て
陽斗は楽しそうに笑っていた。

