告白の翌日。
恋人になって初めての授業が始まった。
いつもと同じ景色なのに
視界がぜんぜん違って見える。
陽斗は隣の席で問題集を開いていたが
ページをめくるたびに、ちらっとこっちを見る。
「……なに?」
「いや。見たくなっただけ」
「見なくていい……」
「無理」
「むりって……」
「彼女が隣にいるんだから、そりゃ見るだろ」
「っ……!」
さらっと言うのやめてほしい。
心臓がもたない。
そんな様子を、前の席の茜が敏感に感じ取ったらしい。
休み時間になった瞬間、くるっと振り向いた。
「ねぇ……なんかふたり、今日距離近くない?」
「っ!? ち、ちかくない!」
「紬、今ちょっと背筋伸ばしたよね?」
「気のせいだよ!」
陽斗を見ると
笑いを噛み殺していた。
「茜、気のせい。紬がただ可愛いだけ」
「陽斗くん、その返しが逆に怪しいからね?」
「怪しいか?」
「怪しいよ!」
「そうか?」
「そうだよ!」
陽斗はなぜか得意げだ。
わたしはもう、顔が熱すぎて消えたい。
「ていうかふたり……さっきから目ぇ合いすぎじゃない?」
「合ってないよ!」
「いや合ってるよね? 完全にカップルの距離なんだけど」
「か、かっ……!」
言葉が出ない。
のどがきゅっと締まって、声が震えた。
すると陽斗が、わざとらしく肩をすくめて言った。
「カップルだったら悪い?」
「よ、陽斗くん……っ!!」
茜が机を叩いた。
「え!? なにその言い方! なにその空気! 怪しすぎ!!」
「茜、声でかい」
「だって絶対なんかあるもん! 紬、教えなさい!」
「な、なんにも……!」
「ほんとーーーに?」
「ほ、ほんと……!」
「ほんとって顔じゃない……!」
わたしの耳まで熱くなっているのを見て、茜は一段階テンションを上げた。
「ねぇ陽斗くん、紬が赤くなってるよ?」
「いつものことだよ」
「いや今日のは違うって!」
「そうか?」
「そうだって!」
その時、周りの男子まで近づいてきた。
「おいおい朝倉、なんか最近春野との距離近くね?」
「え、ああ? 近いか?」
「近いだろ! ニヤニヤしてんだよお前」
「してねぇよ」
「いやしてるしてる!」
陽斗が少しだけ照れくさそうに目をそらした。
その顔に、わたしは心臓が跳ねた。
こんな陽斗、レアすぎる。
「春野もさ、なんか今日可愛いし」
「えっ……!」
「あーもう絶対なんかあるやつじゃん!」
「お似合いじゃね?」
「えっ……!!」
わたしの顔はもう真っ赤で
息もまともに吸えなかった。
陽斗はそんなわたしを見ると
口の端を少し上げて、小さくつぶやいた。
「……バレてもいいけどな」
「よ、陽斗くん!」
「だって……彼女だし」
「っ……!!」
茜と周りの数人が一斉に叫んだ。
「ほらやっぱりーーー!!!」
「言った!! 言ったぞ今!!!」
「朝倉てめぇ隠す気ゼロかよ!」
「おまえら声でかい」
陽斗がため息をついたが
ちょっと嬉しそうだった。
そういう彼を見て
胸の奥がじんわりあたたかくなる。
もう、この関係は
隠さなくても、いいのかもしれない。
恋人になって初めての授業が始まった。
いつもと同じ景色なのに
視界がぜんぜん違って見える。
陽斗は隣の席で問題集を開いていたが
ページをめくるたびに、ちらっとこっちを見る。
「……なに?」
「いや。見たくなっただけ」
「見なくていい……」
「無理」
「むりって……」
「彼女が隣にいるんだから、そりゃ見るだろ」
「っ……!」
さらっと言うのやめてほしい。
心臓がもたない。
そんな様子を、前の席の茜が敏感に感じ取ったらしい。
休み時間になった瞬間、くるっと振り向いた。
「ねぇ……なんかふたり、今日距離近くない?」
「っ!? ち、ちかくない!」
「紬、今ちょっと背筋伸ばしたよね?」
「気のせいだよ!」
陽斗を見ると
笑いを噛み殺していた。
「茜、気のせい。紬がただ可愛いだけ」
「陽斗くん、その返しが逆に怪しいからね?」
「怪しいか?」
「怪しいよ!」
「そうか?」
「そうだよ!」
陽斗はなぜか得意げだ。
わたしはもう、顔が熱すぎて消えたい。
「ていうかふたり……さっきから目ぇ合いすぎじゃない?」
「合ってないよ!」
「いや合ってるよね? 完全にカップルの距離なんだけど」
「か、かっ……!」
言葉が出ない。
のどがきゅっと締まって、声が震えた。
すると陽斗が、わざとらしく肩をすくめて言った。
「カップルだったら悪い?」
「よ、陽斗くん……っ!!」
茜が机を叩いた。
「え!? なにその言い方! なにその空気! 怪しすぎ!!」
「茜、声でかい」
「だって絶対なんかあるもん! 紬、教えなさい!」
「な、なんにも……!」
「ほんとーーーに?」
「ほ、ほんと……!」
「ほんとって顔じゃない……!」
わたしの耳まで熱くなっているのを見て、茜は一段階テンションを上げた。
「ねぇ陽斗くん、紬が赤くなってるよ?」
「いつものことだよ」
「いや今日のは違うって!」
「そうか?」
「そうだって!」
その時、周りの男子まで近づいてきた。
「おいおい朝倉、なんか最近春野との距離近くね?」
「え、ああ? 近いか?」
「近いだろ! ニヤニヤしてんだよお前」
「してねぇよ」
「いやしてるしてる!」
陽斗が少しだけ照れくさそうに目をそらした。
その顔に、わたしは心臓が跳ねた。
こんな陽斗、レアすぎる。
「春野もさ、なんか今日可愛いし」
「えっ……!」
「あーもう絶対なんかあるやつじゃん!」
「お似合いじゃね?」
「えっ……!!」
わたしの顔はもう真っ赤で
息もまともに吸えなかった。
陽斗はそんなわたしを見ると
口の端を少し上げて、小さくつぶやいた。
「……バレてもいいけどな」
「よ、陽斗くん!」
「だって……彼女だし」
「っ……!!」
茜と周りの数人が一斉に叫んだ。
「ほらやっぱりーーー!!!」
「言った!! 言ったぞ今!!!」
「朝倉てめぇ隠す気ゼロかよ!」
「おまえら声でかい」
陽斗がため息をついたが
ちょっと嬉しそうだった。
そういう彼を見て
胸の奥がじんわりあたたかくなる。
もう、この関係は
隠さなくても、いいのかもしれない。

