文化祭が終わって家に帰ったら
身体は疲れてるはずなのに
興奮して眠れなかった。
頭の中に何度も浮かぶのは
夕焼けの屋上で、俺の胸に顔を寄せてきた紬の感覚。
細い肩
小さく震えてた呼吸
触れた髪の匂い
頬に触れたあの温度
全部、忘れられない。
あの時、言えた。
言おうと思えば言えた。
でも――
「……逃げる顔してたもんな」
本当に怖がらせたくなかった。
あの涙を思い出すだけで胸が痛い。
ちゃんとした言葉で
ちゃんとしたタイミングで
紬が受け止められるように言いたかった。
だから昨日は言わなかった。
でも、今日は違う。
◆ 朝、玄関を出た瞬間
「絶対言う」
空気に向かってつぶやいた。
誰に聞かれなくてもいい。
言葉にすることで、自分を逃げられなくする。
紬に会いたくて
珍しく早く学校に向かった。
教室に入ってもまだ紬はいなかった。
席についた瞬間、胸がざわつく。
昨日の屋上の光景が浮かぶ。
――春野。
――今日、一日ずっと思ってたことがある。
言いかけたあの言葉。
全部言い切りたい。
「……紬、来たらすぐ話す」
机に肘を置いて、手を組んで深呼吸した。
昨日の紬は
泣きそうだった。
でも、逃げなかった。
俺の胸に、そっと寄り添ってくれた。
あれだけで十分だった。
あれを見たら、もう迷えない。
「今日こそ言う。逃がさない」
本当にそう思った。
◆ 教室のドアが開いた瞬間
ガラッ、とドアが開く音。
顔を上げると
紬がゆっくり入ってきた。
昨日より少し赤い目
それでも小さく微笑んだのが分かった。
その瞬間、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
「……おはよ、陽斗くん」
声が震えてた。
それでもまっすぐ俺を見た。
逃げていない。
昨日の紬じゃない。
俺も立ち上がる。
「春野。ちょっといい?」
「え? い、今……?」
「今」
紬は驚いた顔をしたけど
逃げる素振りはなかった。
その反応だけで
全部分かった。
この子はもう
逃げない。
「屋上、あとで行くとか言わない。今行く」
「……っ」
「ちゃんと話したい。昨日の続き」
紬の目が揺れた。
でも、嫌そうじゃない。
むしろ――期待してる顔だった。
心臓がうるさい。
でも逃げない。
「春野」
「……なに?」
「今日こそ言う」
紬の肩が少し震えた。
「全部、言うから」
もう止まらなかった。
「だから――聞いてくれ」
紬の瞳が、わずかに潤んだ。
その目を見た瞬間
昨日感じた迷いはきれいに消えた。
「俺、春野のこと――」
そこまで言ったところで
廊下のざわめきが少し大きくなった。
でももう止めない。
今日、確実に伝える。
紬はゆっくりとうなずいた。
「……うん」
その一言で
心が震えた。
身体は疲れてるはずなのに
興奮して眠れなかった。
頭の中に何度も浮かぶのは
夕焼けの屋上で、俺の胸に顔を寄せてきた紬の感覚。
細い肩
小さく震えてた呼吸
触れた髪の匂い
頬に触れたあの温度
全部、忘れられない。
あの時、言えた。
言おうと思えば言えた。
でも――
「……逃げる顔してたもんな」
本当に怖がらせたくなかった。
あの涙を思い出すだけで胸が痛い。
ちゃんとした言葉で
ちゃんとしたタイミングで
紬が受け止められるように言いたかった。
だから昨日は言わなかった。
でも、今日は違う。
◆ 朝、玄関を出た瞬間
「絶対言う」
空気に向かってつぶやいた。
誰に聞かれなくてもいい。
言葉にすることで、自分を逃げられなくする。
紬に会いたくて
珍しく早く学校に向かった。
教室に入ってもまだ紬はいなかった。
席についた瞬間、胸がざわつく。
昨日の屋上の光景が浮かぶ。
――春野。
――今日、一日ずっと思ってたことがある。
言いかけたあの言葉。
全部言い切りたい。
「……紬、来たらすぐ話す」
机に肘を置いて、手を組んで深呼吸した。
昨日の紬は
泣きそうだった。
でも、逃げなかった。
俺の胸に、そっと寄り添ってくれた。
あれだけで十分だった。
あれを見たら、もう迷えない。
「今日こそ言う。逃がさない」
本当にそう思った。
◆ 教室のドアが開いた瞬間
ガラッ、とドアが開く音。
顔を上げると
紬がゆっくり入ってきた。
昨日より少し赤い目
それでも小さく微笑んだのが分かった。
その瞬間、胸の奥がぎゅっと熱くなる。
「……おはよ、陽斗くん」
声が震えてた。
それでもまっすぐ俺を見た。
逃げていない。
昨日の紬じゃない。
俺も立ち上がる。
「春野。ちょっといい?」
「え? い、今……?」
「今」
紬は驚いた顔をしたけど
逃げる素振りはなかった。
その反応だけで
全部分かった。
この子はもう
逃げない。
「屋上、あとで行くとか言わない。今行く」
「……っ」
「ちゃんと話したい。昨日の続き」
紬の目が揺れた。
でも、嫌そうじゃない。
むしろ――期待してる顔だった。
心臓がうるさい。
でも逃げない。
「春野」
「……なに?」
「今日こそ言う」
紬の肩が少し震えた。
「全部、言うから」
もう止まらなかった。
「だから――聞いてくれ」
紬の瞳が、わずかに潤んだ。
その目を見た瞬間
昨日感じた迷いはきれいに消えた。
「俺、春野のこと――」
そこまで言ったところで
廊下のざわめきが少し大きくなった。
でももう止めない。
今日、確実に伝える。
紬はゆっくりとうなずいた。
「……うん」
その一言で
心が震えた。

