ベッドの上で天井を眺めていた。
「心配したよ、朝礼で急に倒れたからさ」
クラスメイトの物部(もののべ)レインくんの声がする。
数分間だけれど気を失っていたみたいた。
「ああ、わたしって生まれつき体が弱くて、保健室登校しているんだ。運んでくれてありがとう」
「大丈夫だよ。血圧が低くなったりすると倒れちゃうことあるよね。特に今日みたいに暑い日は熱中症とかもあるし、水分と食事をしっかり摂っておかないとね」
レインくんはクールで優しいし、テストは学年1位、おまけにものすごくイケメンだから女子からとっても人気がある。
そんなレインくんに優しくされたら、恋とは縁のないわたしだって嬉しいし、勘違いしちゃう。心臓がドキドキだ。
「ああ! レインずるいぞっ! 僕だって保子(やすこ)さんを運びたかったのにっ!」
ハスキーボイスの可愛らしい子犬みたいな男子が現れた。知らない男子だ。ものすごく整った顔立ちだし、同じクラスなら間違いなく女子から人気になっているだろうから知り合いじゃないとは思うけれど。
「レインくんの友達? わたしのことを知っているみたいだけれど……」
レインくんはクラスメイトには見せたことのない、険しい顔で、眉間にシワをつくっていた。
「はぁ。隠し通せることじゃないしな。実は、俺たちは臓器男子なんだ」
「ぞ、ぞうきだんし? なにそれ?」
「臓器……胃とか肺とか、体の中にある臓器のことだ。本当はきみの体の一部として生まれるはずだったんだよ。そして、きみは健康な体で幸せになるはずだったんだ」
ええっ! わたしが生まれつき体弱いのも、成績が悪いのも、わたしの体の一部が臓器男子っていう男の子になっちゃったからなの!?
「それで、きみを助けるために神様が俺たちを作ったんだ。だから、俺たちはきみの一部として生きていくつもりだよ」
「信じられないよ。その、あまりにも想像を超えているっていうか……」
「そう言うのも無理はないよな。脳をつかさどる俺でも、このことを上手く説明できる気はしない。ただ、これからきみの元にはたくさんの臓器男子が現れるはずだ。そういう運命だから。そして、臓器男子はみんな、きみに恋をする……それも運命さ。もともとはきみの体の一部だったのだから」
いやいや、突拍子がなさすぎて理解できないよ!?
「好きでもない男から好意を寄せられても迷惑かもしれないけれどね」
「い、いや、そんなことはないけれど……それにわたし、好きな人とかいないし」
「臓器男子と恋をするときみの体は元気になるんだ。だから、たくさん臓器男子と恋をするほうがいい。そして、きみと臓器男子が両思いになると、きみはその臓器男子の力を手に入れることができる。例えば、僕となら……きみはすごく頭がよくなって、高校受験や大学受験どころか後世に名を残すような天才にだってなれる」
そ、そうなのか。成績がよくなるのは嬉しいな。実はお医者さんや看護師さんという仕事にも興味がある。体力のないわたしにできるのかわからないけれど。
「ふたりだけで話していてずるいよーっ! 僕は四谷(よつや)ハート! 心臓の臓器男子だよ。こう見えてとっても力が強いんだ」
健康診断でひっかかったのを思い出した。聴診器を胸に当てるのだけれど、わたしだけ雑音がするといって病院で診断を受けることになったっけ。なんだか、すごく悲しくて怖かったのを覚えている。
「わたし、体の全部が健康になりたいよ。一人しか選んじゃだめなの?」
「ああっ、泣かないでっ! 俺たち臓器男子はみんなきみの味方だよっ! 恋をすればするほどどんどんきみの体は元気になっていくんだ。一人しかダメってわけじゃないよっ!」
ハートくんが優しく、わたしを慰めてくれた。
「まぁ、本音を言うと、きみのことを独占したい気持ちはあるけれどねっ! でも、きみの健康が第一だからっ!」
「臓器男子と恋をすればするほど、わたしの体は良くなっていくんだね。なんとなくわかったよ」
「うんっ! そういうことっ! それに恋は病を治す薬だからねっ!」
「ハートは非科学的なことを言うな……まぁ、前向きになることが体にいいのは本当だが」
「うん! わかった! レインくん! ハートくん! これからよろしくねっ!」
「心配したよ、朝礼で急に倒れたからさ」
クラスメイトの物部(もののべ)レインくんの声がする。
数分間だけれど気を失っていたみたいた。
「ああ、わたしって生まれつき体が弱くて、保健室登校しているんだ。運んでくれてありがとう」
「大丈夫だよ。血圧が低くなったりすると倒れちゃうことあるよね。特に今日みたいに暑い日は熱中症とかもあるし、水分と食事をしっかり摂っておかないとね」
レインくんはクールで優しいし、テストは学年1位、おまけにものすごくイケメンだから女子からとっても人気がある。
そんなレインくんに優しくされたら、恋とは縁のないわたしだって嬉しいし、勘違いしちゃう。心臓がドキドキだ。
「ああ! レインずるいぞっ! 僕だって保子(やすこ)さんを運びたかったのにっ!」
ハスキーボイスの可愛らしい子犬みたいな男子が現れた。知らない男子だ。ものすごく整った顔立ちだし、同じクラスなら間違いなく女子から人気になっているだろうから知り合いじゃないとは思うけれど。
「レインくんの友達? わたしのことを知っているみたいだけれど……」
レインくんはクラスメイトには見せたことのない、険しい顔で、眉間にシワをつくっていた。
「はぁ。隠し通せることじゃないしな。実は、俺たちは臓器男子なんだ」
「ぞ、ぞうきだんし? なにそれ?」
「臓器……胃とか肺とか、体の中にある臓器のことだ。本当はきみの体の一部として生まれるはずだったんだよ。そして、きみは健康な体で幸せになるはずだったんだ」
ええっ! わたしが生まれつき体弱いのも、成績が悪いのも、わたしの体の一部が臓器男子っていう男の子になっちゃったからなの!?
「それで、きみを助けるために神様が俺たちを作ったんだ。だから、俺たちはきみの一部として生きていくつもりだよ」
「信じられないよ。その、あまりにも想像を超えているっていうか……」
「そう言うのも無理はないよな。脳をつかさどる俺でも、このことを上手く説明できる気はしない。ただ、これからきみの元にはたくさんの臓器男子が現れるはずだ。そういう運命だから。そして、臓器男子はみんな、きみに恋をする……それも運命さ。もともとはきみの体の一部だったのだから」
いやいや、突拍子がなさすぎて理解できないよ!?
「好きでもない男から好意を寄せられても迷惑かもしれないけれどね」
「い、いや、そんなことはないけれど……それにわたし、好きな人とかいないし」
「臓器男子と恋をするときみの体は元気になるんだ。だから、たくさん臓器男子と恋をするほうがいい。そして、きみと臓器男子が両思いになると、きみはその臓器男子の力を手に入れることができる。例えば、僕となら……きみはすごく頭がよくなって、高校受験や大学受験どころか後世に名を残すような天才にだってなれる」
そ、そうなのか。成績がよくなるのは嬉しいな。実はお医者さんや看護師さんという仕事にも興味がある。体力のないわたしにできるのかわからないけれど。
「ふたりだけで話していてずるいよーっ! 僕は四谷(よつや)ハート! 心臓の臓器男子だよ。こう見えてとっても力が強いんだ」
健康診断でひっかかったのを思い出した。聴診器を胸に当てるのだけれど、わたしだけ雑音がするといって病院で診断を受けることになったっけ。なんだか、すごく悲しくて怖かったのを覚えている。
「わたし、体の全部が健康になりたいよ。一人しか選んじゃだめなの?」
「ああっ、泣かないでっ! 俺たち臓器男子はみんなきみの味方だよっ! 恋をすればするほどどんどんきみの体は元気になっていくんだ。一人しかダメってわけじゃないよっ!」
ハートくんが優しく、わたしを慰めてくれた。
「まぁ、本音を言うと、きみのことを独占したい気持ちはあるけれどねっ! でも、きみの健康が第一だからっ!」
「臓器男子と恋をすればするほど、わたしの体は良くなっていくんだね。なんとなくわかったよ」
「うんっ! そういうことっ! それに恋は病を治す薬だからねっ!」
「ハートは非科学的なことを言うな……まぁ、前向きになることが体にいいのは本当だが」
「うん! わかった! レインくん! ハートくん! これからよろしくねっ!」



