未来からの鏡 5年先の未来が見えたのよ、鏡に映っているカレンダーは2029年だったのよ

【未来からの助言】

 1か月後。

 鏡の事は概ね忘れかけていた。

 いつものように学校へ行き、授業を受け、そして家へ帰る。
 もちろん下校途中に友達と遊びに行くこともあるし、日曜日は一日中、友達と遊んでいることもある。

 ある日、一人部屋にいると、どこからともなく声が聞こえてきた。
 耳を澄ますと、外からではなく明らかに家の中から声がするようだった。

 目を閉じながら、その声に集中すると、どうやら押入れの中から声がすることがわかった。

「どういうことなの?」

 私は恐る恐る、押入れを開けてみると、例の箱があった。
 ここで私は鏡の事を思い出した。

「ひかる、いるんでしょ?」

 箱の中から声がする。
 後ろを振り返ると、開いたカーテンの隙間から月が覗いていた。

 震えながら箱を開け、鏡を取り出し、覗いてみると、
 そこには以前見た5年後の私だと思われる人物が映っていた。

 ただ、前のように私の動きと連動しているわけではなく、
 独立して動き、話しかけてきた。

「私は5年後のあなた。」
「あと数日であなたの友人に危機が訪れます。」

「友人って、屈子の事?」

「そうです。」
「学校の屋上から、風に煽られた紙を拾おうとして転落。死亡します。」

「あらかじめ屈子に教えておけばいいの?」

「具体的に教えてしまうと、過去が大幅に変わってしまって、別の危機になる可能性が高いです。」
「本人には教えずに、そっと助けてください。」

 月が陰ったのか、鏡は元に戻った。

 鏡を改めて見つめ、今までのことが夢だったのか、なんだかわからない不安感があったが、とりあえず、屈子のことを見守ることを決意した。


 翌日。

 屈子が「おはよう!」と元気な声で言った。

 私も「おはよう」と返事をし、屈子の顔をまじまじと見つめた。

 屈子は『どうしたのかな?』って顔をしていたが、そのまま席へ着いた。


 数日、屈子を見ていたがとくに何も起きなかった。

 私は『あの出来事は夢だったんだ。何も起きなければいいけど。』と思っていた。



 そう思っていた翌日。

「学校の屋上から、富士山が見られるんだね。知らなかったよ。」

 そう言うと屈子が屋上へ向かっていった。

 私は緊張が走った。

 もちろん、私も付いていった。

 なにやら、屈子はここら辺の地図を印刷した紙をもって、方向を調べていた。

 私は地図を取り上げ、屈子に見えるように持った。

「私が持っていてあげるよ。そのほうがやりやすいでしょ。」

 屈子は私の持っている地図をまじまじと見ながら、方向を調べ、富士山を見た。

「すごく小さくて、よく観ないとわからないけど、確かに観えるね。」

 屈子は嬉しそうに観ていたが、私はドキドキしてそれどころではなかった。

 しかし、何事も起きなくて、私のドキドキもすこし抑えられた。

 さて、帰ろうと思って、屈子が振り返った瞬間、風が吹き体のバランスが崩れた。

 フェンスに手をやり、ほっとしている屈子だが、その時フェンスが小さな音を立て崩れた。

「きゃ~~。」と屈子は叫び、そのまま体が落ちていった。

 しかし、フェンスの下のほうのまだ壊れていない箇所に掴まっていた。


 私はまだ臨戦態勢を解除してなかったので、すぐに屈子の腕を掴み、助け出した。

 屈子はあまりの出来事に声が出なかった。

 私もある程度の予測はできたとはいえ、その場でへたり込んでしまった。


 叫び声に反応して、先生たちも来て、その後、屋上の使用は禁止になった。