若葉side (受・幼なじみ)


「そこ間違ってる」



 机の上に広げられた、大学受験用の問題集。



「さっき教えたことをひねれば、答えが出るはずだが」



 キレイ顔の紅亜(くれあ)くんは普段通り眉を吊りあげ、僕・茂森(しげもり)若葉(わかば)が間違えた問題を指でトントンしてくる。

 紅亜くんって言うのは僕と同い年の幼なじみで、甘音(あまね)くんの双子の弟です。



「貴重な時間を使って教えてやってんのに、なんで理解できないかな」



 女子が一定の距離を置いてでも群がってくるワイルド美男子。

 不機嫌オーラで人を寄せ付けない魔王様なんだ。



「若葉の脳みそは生クリームでできてる説、あながち間違ってないかも」



 呆れたように両手を広げた紅亜くんに、物申さずにはいられない。



「都市伝説みたいな言い方したけど、僕の脳みそを生クリームだって言ったの小1の時の紅亜くんだからね」

「そんなことはどうでもいい、若葉は集中力が切れるの早すぎなんだよ、気合を入れて公式を頭に叩きこめ!」