☆甘音side☆
ここ数日、紅亜の様子がおかしい。
顔に笑顔を貼りつけるコミュ力特化型とは180度真逆の無表情魔王とはいえ、若葉と付き合いだしてからは表情が緩みフッと口角が上がる決定的瞬間を何度も見てきたのだが、最近は険しい表情しかしていない。
不機嫌の極みオーラバリバリで、目が合った俺を視線で滅殺するがごとく睨みつけてくる。
若葉の様子もおかしい気がするんだ。
教室で話しかけても「うん」か「ううん」のイエス・ノーで会話が早期終了。
先生の所に行かなきゃと言って、不自然に俺の前からいなくなることも多くて。
「なぁ」と声をかけられ、中庭のベンチに座ったまま顔を上げる。
俺の正面に立っていたのは、同じクラスの龍之介くんだった。
若葉と仲がいいいつメンの一人。
用がある時くらいしか話しかけてこないのに珍しいな。
心に生じた困惑をごまかすように、優等生笑顔を顔に乗せる。
「どうかした?」
「おまえの双子の弟と若葉って別れた?」
「え?」



