「なにそれ」と不機嫌声が届き、やってしまったと肝が冷える。
「えっとね、悪い意味じゃなくてね……」
さらに高速で両手を振るも、紅亜くんの表情は険しさが増すばかり。
「僕にはワイルドな色気がないから、うらやましいなって……」
怒鳴られるのを覚悟で目をつぶった僕の肩に、紅亜くんの腕が絡みついた。
抱きしめられてる?
さらに強く引き寄せられ、低身長の僕のひたいが紅亜くんの頬に沈み込む。
ダイレクトに伝わりあう熱。
鼻腔をくすぐる制汗剤のさわやかな香り。
ちょっとだけ荒っぽい紅亜くんの吐息。
どれもが恋愛初心者の僕の平常心を狂わせる。
待って、恥ずかしい、なんか無理。
目が回るほど強烈なドキドキに襲われ顔が熱いよ。
脈というのは、一定のリズムを保つのが責務だよね。
きみが体内で誤作動を起こし始めたせいで、平常心まで逃げ出しちゃったの。
代わりに羞恥心が僕の心を我がもの顔で占拠しているの、どうにかして。



