心を癒したくて伸ばした僕の手は、甘音くんの腕には届かなかった。
「もう若葉は試合に出ないよな」
強い力で紅亜くんに手首を掴まれたから。
「次の試合の俺専属世話係っつーことで、若葉をもらってくわ」
「若葉と紅亜はクラスが違うでしょ。若葉は今から俺とクラスメイトの応援に行くんだよ」
紅亜くんと甘音くんは睨みあっていて、今にも兄弟げんかが勃発しそうな空気。
「なぁ若葉、今の試合のMVPは?」
筋肉がのった男らしい紅亜くんの腕が、僕の首に絡みついてきた。
オドオドしながら甘音くんの顔色を窺いつつ「紅亜くん、すごかったね」と弱弱しく答える。
「じゃあ若葉の恋人は?」
「もちろん……紅亜くん……だけど……」
「だよな。そんなオマエは俺と甘音のどっちに従うわけ?」
今はクラス対抗球技大会の真っただ中。
自分のクラスメイトの応援に行かなきゃいけないことはわかっている。
でも僕は今、ある所から突き刺さる視線におびえているんだ。
それは紅亜くんのものでも甘音くんのものでもない。
体育館の壁際に立ち、甘音くんに熱い視線を送る黒髪ロングの美女。
そう、生徒会長で甘音くんの彼女でもある鈴ちゃんからの視線。



