「僕が難しいことを理解できないのは、生まれつきだよ」
「若葉の両親、県で一番頭がいい高校出身だって言ってなかったか」
「うちのお父さんは研究者でお母さんは小説家でしょ。頭がいいって言うより、集中力が怪物並みに優れてるの」
「小学校の時によくあったよな。両親がそれぞれ何かに熱中してて、若葉を放置してたこと」
「家が隣だった紅亜くんと甘音くんが一緒に遊んでくれたから大丈夫だったけど、二人がいなかったら寂しいって大泣きしてたかもね」
「いや、若葉はよく泣いてたよ」
「え?」
そうだっけと、真顔で紅亜くんを見つめる。
「学校のことを親に話しても上の空だったとか、頷いてはいたけどちゃんと話を聞いてくれなかったって俺たちに泣きついて、泣きつかれてテントの中で寝ちゃったり」
「嘘でしょ? 全く覚えてない」
「ぶはっ、マジか、最悪な過去を消去できるスーパーウルトラ記憶脳の持ち主かよ、うらやましい」
空に向かって噴出した紅亜くんの胸を「さっきから笑いすぎだよ」と、僕はグーでボコボコ叩いた。
枕代わりに頭の下に腕を置いた紅亜くんは、少しだけ微笑みながら目を閉じている。



