「うわっ、何を言ってるのかわからなくなってきちゃった。変なこと言ってほんとうにごめん。僕は男だし、気持ちを押しつけられたら迷惑だよね。今の忘れて、気の迷いだから」
泣きそうな顔で俺の両肩を必死に揺する若葉が、可愛くてたまらない。
「お願い甘音くん、僕のこと嫌いにならないで」
明らかに若葉は平常心を保っていない。
とんでもないことをしでかした時のようにオロオロと視線を泳がせ、大きな瞳を雫で潤ませながら「ほんと忘れて……甘音くんのそばにいられなくなっちゃうのが一番いやなんだ……」と、三角ずわりでうつむいてしまった。
静まりかえる狭いテントの中。
『甘音くんと幼なじみ以上になりたいって思いもあって……それがなんなんだって聞かれたら、恋人ってなっちゃうけど……』
若葉の言葉を思い出し、満悦至極の幸福アンサーにようやくたどり着く。
――さっきの告白は夢じゃなかったんだ。
――若葉は俺のことが好きなんだ。
じんわりと熱を上げる俺の心臓。
幸せが血液に溶け、ハピネス色の春が体中をめぐりだす。



