「あっ、あの子」
目の前に座る翔太くんの視線に誘導された。
振りかえった僕の瞳に映ったのは、窓ぎわの席で一人本を読んでいる甘音くんの姿。
教室でお昼を食べるなんて珍しいなと思ってはいた。
生徒会長としての任期を終えた今も、引継ぎやらなんやらでお昼は生徒会室でとっていたから。
黒髪ロングの美女が、甘音くんの机の横まで来て歩みを止めた。
胸元にファイルを抱え、申し訳なさそうに頭を下げている。
「甘音先輩、お昼休みにお邪魔しちゃってごめんなさい。生徒会のことで確認したいことがあって」
さすが優雅な微笑み王子。
甘音くんは、相手の心を陽だまりぽかぽかなお花畑にする天才なんだろうか。
「先輩の教室に入るのって勇気がいるよね。廊下を歩くだけでも視線が気になったりするし」
読んでいた本を閉じ「鈴ちゃんはえらいね」と、彼女を目を見て微笑んだ。



