甘音くんの優しい手のひらを独占している女の子が、この世のどこかにいる。
彼女と甘音くんが微笑みあう姿なんて見たくないから、うちの高校の生徒ではありませんように。
「昨日の放課後、我が家に遊びに来てたよね。邪魔したら悪いかなって思って若葉に声をかけなかったんだけど、俺って失礼じゃなかった?」
「そんなそんな」
と慌てて両手を振った僕は、
「こっちこそ、甘音くんに挨拶もせず家に上がり込んじゃってごめんね」
と軽く頭を下げた。
「なんで若葉は泣きそうな顔をしてるの?」
真剣な顔で問われ、「え?」と固まってしまった。
知らなかった、今の僕は泣きそうな顔をしてるんだ。
鼻頭がツーンとするなとは思った。
心臓にも強くかみしめていた唇にも、ジクジクとうずく痛みがある。
この痛苦しい病を僕は知っている。
子供のころから患ってきた『恋の病』で間違いない。



