若葉side
記憶がなくなることがこんなに怖いなんて、思ってもいなかった。
忘れた期間はたった2か月ほどだと思う。
高3になり『やったぁ、甘音くんと同じクラスになれた』と、飛び跳ねながら喜んだのは覚えている。
高校で再会してからずっと僕を無視し続ける紅亜くんに一度だけ勇気を出して
『甘音くんと3人でお花見しよう、小学生のころみたいに。僕がメロンクリームソーダを作るから』
と誘ってはみたものの
『時間の無駄』
と冷たく拒否られ悲しかったことも、苦い記憶として刻まれている。
甘音くんへの恋心が募りすぎて、ダダ洩れしてるんじゃないかと不安でたまらなくて、勇気を出して告白してみようかなと悩んでいたことまではっきりと。
でも4月中旬以降の記憶はない。
甘音くんに彼女ができたことを紅亜くんから聞いたのは、病院で目覚めた後のこと。
記憶がない時期の僕は失恋をして悲しんでいたらしいけど、僕は甘音くんに告白なんてしてないよね?
大丈夫、臆病すぎるほど僕は恋にへたれなんだ。
告白なんて自分から絶対にできない人種……だとは思うけど。
過去の自分が甘音くんに告白していませんように。
絶対にしていませんように。



