狭いテントの中、目の前から涙目の若葉の手が伸びてきた。
持っていたメロンクリームソーダが強引に奪われキョトン。
てっぺんに鎮座していたチェリーがバニラアイスの山を滑り降り、緑色のシュワシュワの中に沈んでいく。
隅に置かれた小さいテーブルに、色鮮やかなメロンクリームソーダが2つ。
小6までは3つ並んでいたな。
テントの中も男子3人でギューギュー詰めだった。
俺と若葉、もう一人は俺の双子の弟の紅亜だったんだけど。
俺と紅亜は仲が悪く揃えば口論7・叩きあい3の激しい兄弟げんかばかり。
一人っ子の若葉はオロオロしながらも俺たちの言い分をそれぞれ聞いて、頭をひねっては仲直りの糸口を探し、一生懸命ケンカの火消しをしてくれていた。
中学で俺たちが引っ越すまで、若葉とは家が隣どうし。
小さいころから若葉は、明るくて元気で素直で優しい男の子だった。
同性とわかっていながら若葉を好きになったのは、癒し系強めで性格が天使だから。
恋人にしたいこんな優良物件は、高3まで生きてきて他に見当たらなかったからね。
俺が大企業の面接官なら、一目見て合格の烙印を押しちゃうんだろうな。



