「病院で言われたろ、若葉の脳が混乱するようなことは言うなって」
「……」
「甘音ってさ、優しい王子様みたいな顔してるくせに若葉を地獄に突き落としたいんだな。あー怖い怖い」
紅亜は俺を挑発するように、冷めた目で手をヒラつかせている。
――若葉の脳が混乱する。
それを言われたら何もできない。
悔しさで唇をかみしめ、弱弱しい声を吐き出す。
「紅亜は気づいてなかった? 俺と若葉が付き合ってたこと」
「気持ち悪いくらいニヤケてたよな、あれで隠してるつもりだったのかよ」
「じゃあなんで、恋人同士だっていう嘘を若葉についたの?」
「過去なんてどうでもいい」
「え?」
「今、若葉の恋人はこの俺だ。部外者は俺たちに関わるな!」
敵意むき出しで声を荒らげた紅亜は、グラスの中をのぞきこむと
「アイス溶けてるわ、まっ極甘バニラなんてなくてもいいけど」
トレイにメロンクリームソーダを二つのせ、リビングから出て行ってしまいました。
はぁぁぁ、完全なる敗北だ。
悲しい、呼吸が苦しい、胸が痛くてたまらない。
どうやったら宝物を取り返せるのか、誰か教えてください。



