紅亜のいじり声と混ざり合いながら、若葉の楽しそうな声が壁を越えてきた。
耳をそぎ落としたくなり、本を片手に部屋の外へ逃げる。
1階に降り、リビングのソファにお尻を沈ませ小説を開いた。
が、本の世界に入り込めない。
怒りと悲しみが心臓を連打してくる今、物語に浸る余裕なんて微塵もない。
本をローテーブルに置く。
目をつぶって視覚を遮断させた。
聴覚も麻痺させたい。
大音量ガンガンの音楽を耳に送りこもう。
ソファに座ったままワイヤレスイヤホンを取ろうと手を伸ばしたのに、なぜ装着前のこのタイミングでリビングに入ってくるかな。
「いたのかよ、まじ気分わりー」
ゴミを見るような冷酷な目で嫌味を言われた俺の方が、気分が悪いんだけど。
俺の宝物を奪った双子の弟を睨みかえす。
紅亜は俺から視線を外し、後方のキッチンに向かった。
冷蔵庫から取り出したのはメロンソーダのペットボトル。
グラスに注ぎ、バニラアイスを浮かべ、てっぺんに鮮やかなチェリーを乗せている。



