『若葉の記憶がなくなる前から俺たちは付き合ってた。それが現実でそれが真実。なんか文句ある?』
『そんなはずは……』
『つーか放せよ、腕痛いんだけど。学校で微笑み王子なんて呼ばれてる元生徒会長がこんな野蛮で狂暴だって、なんで若葉も学校の奴らもわかんねーかな。おまえ詐欺師かよ』
紅亜は俺に口をはさむ機会を与えない。
『若葉は俺のだからな!』
俺の手を振り払うと、俺に背を向け歩き出し、ドアを開けバンとしめ、自分の部屋にこもってしまった。
――以上が、俺の初恋が灰と化した思い出したくもない悲しい出来事です。
思考を過去から現在にひき戻す。
隣の紅亜の部屋からは、相変わらず若葉の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
本当に付き合ってるんだな、あの二人。
若葉の記憶さえ戻れば、俺たちはまた恋人に戻れたりして。
いや、たぶんそれはない。
冷たい態度をとり続けてきたワイルド魔王に優しくされたら、恋人として本気で愛されたら、若葉はどうなるか。
紅亜の甘辛ギャップに恋落ちすることまちがいなし。
若葉の記憶が戻ったころには、若葉は紅亜のことが大好きでしかたがなくなっているだろう。
すでに今、若葉は紅亜に恋落ちしているかもしれないが。



