袋から出して出来上がりの二人用テントの中に座り、好きな人とご対面状態。

 真っ赤な顔で慌てたように両手を振る若葉から、目が離せない。

 そうか、これは夢だ。

 日々膨れあがっている若葉への思いが、俺に幻を見せてくれているのか。



「ただね……本当にどうにかしてって感じで……」



 サラサラな黒髪を揺らしながら震えている若葉がかわいい。



「一日じゅう甘音くんのことしか考えられなくて……」



 萌え袖で真っ赤な顔を隠すそのしぐさ、抱きしめたくてたまらない。



「甘音くんのことを思い出しちゃうだけでドキドキするから、夜もなかなか眠れないんだ……僕の目の下、クマできてないかな?」



 恥ずかしそうにうつむいてるから確認できないけど、熊だろうが恐竜だろうが大丈夫だよ。

 狂暴な動物に襲われそうになっても、俺が守ってあげるから安心してね。



「授業も頭に入らなくて……甘音くんの横顔でいいから見れないかなって、後ろの席から甘音くんの背中ばっか見つめちゃって……だから今日の数学で当てられた時、隣の早川君が答えを教えてくれてほんと助かっちゃった……」