甘音side (攻め・双子兄)


 壁の向こうが気になってしょうがない。

 隣の紅亜(くれあ)の部屋には今、若葉(わかば)が遊びに来ている。

 お家デート中なのだろう。

 何を話しているかまでは聞き取れないが、弾むような笑い声は元カレの声で間違いない。

 

「元カレか。不快極まりない呼び方だな」



 まぶたに手の甲を押し当て、自分の部屋のベッドに寝ころぶ。



 【幼なじみ】

 【クラスメイト】

 【元カレ】


 若葉と俺の関係が、たった3ワードで説明ができてしまう切なさよ。



 悲しみを消し去りたくて、若葉のイメージカラーでもあるメロンソーダ色のクッションをギューギュー抱きしめてみた。

 癒しなんて得られない。

 敗北感と虚しさが増しただけ。



 ――若葉は俺の恋人だったのに、紅亜にとられるなんて。



 ナイフでえぐられたように、胸がズキズキと痛みを増す。