荒ぶった空気がいなくなり、部屋が静まり返る。
椅子に座ったまま天井を見上げ、ハテナが飛び交う脳を手のひらでさすってみる。
誰か教えてください。
記憶がないこの2か月の間、僕に何が起きたんでしょうか。
一週間前のこと。
まぶたを開けたら病院のベッドの上だった。
泣きそうな顔の紅亜くんと目があい、いきなり抱きしめられた。
『目を覚まさなかったらどうしようって思ったじゃねーか、恋人残してどっか行こうとすんなバーカ!』
必死な声の主は、耳まで真っ赤に染めていて。
『僕はなんで病院にいるの? えっえっ、こっ恋人? 僕と紅亜くんが?』
僕は動揺を隠しきれなくて。
話を聞くと、3週間前から僕と紅亜くんは付き合いだしたらしい。
自分が階段から落ちたことも覚えていなくて。
そのとき僕の記憶が、直近やく2か月分なくなっていたことに気がついたんだ。
『僕と紅亜くんが付き合ってるなんて信じられないよ。だって高校で再会してから紅亜君に避けられてたんだよ。学校ですれ違っても無視されてたし』
それに僕は優しい甘音くんのことが好きだった。
紅亜くんと付き合いだしたのなら、甘音くんを諦めたということになる。



