楽しそうに笑い声をもらした甘音くんと反対に、紅亜くんが背を丸めている。
額に手を当てうつむいた後、紅亜くんはさっぱりとした表情で両手を上げた。
「あぁもう、降参降参。この勝負俺の負け」
え?
「記憶喪失の若葉に甘音と鈴って子が付き合ってる、俺と若葉は恋人同士だって嘘を吹き込んだ卑怯者は、恋のリングから降りてやるよ」
プライドが高くて負けず嫌いの魔王様が敗北宣言?と、目を見開いたまま戸惑ってしまう。
「若葉は子供のころから甘音のことだけが好きだったよな。メロンクリームソーダを飲みながら若葉と甘音が微笑みあうの見て、ずっとしんどかったよ。これ以上メンタルが病むのは耐えられねーし、身を引くって言ってんの」
紅亜くんがさわやかに笑った。
でも痛々しい笑顔にしか見えず、僕の心臓がズキズキと悲鳴を上げる。
確かに僕は子供のころから甘音くんが好きだった。
人生のほとんどは甘音くんへの片思い期間だったと言い切れる。
でも、今は違うんだ。



