「おいで若葉」
鼻腔をくすぐる甘い香り。
甘音くんに抱きしめられたと気がついたのは、僕の頬が甘音くんの胸に沈み込んだあとだった。
「俺のぬくもりは若葉を癒すためのものだよ」
「甘音、独り占めすんな」
不機嫌声とともに伸びてきた腕。
肩を掴まれ、今度は紅亜くんの腕の中に閉じ込められた。
「俺の顔見るなよ、絶対恥ずい顔してるから。っつーか俺が感情を伝えるのが不器用なあまのじゃくって知ってるなら、オマエを抱きしめてるのがどういう意味か気づけよバーカ」
紅亜くんも緊張してるのかな。
僕にドキドキしてくれているのかな。
声が震えている。
尋常じゃない速さで、彼の心臓が跳ね続けている。
「12345678910。はい独占タイム終わり、つぎ俺ね」と、再び甘音くんの甘さに包まれた。
「早すぎ、若葉を返せ」
「イヤだよ」
「誰にでも優しい元生徒会長様が、弟には何も与えず何もゆずらないって最低」



