脳がもやもやしたまま、隣に座る紅亜くんをまじまじと見つめてしまった。



「うわっ急になんだよ、顔近づけんなバーカ!」



 目をそらし、恥ずかしそうに首の後ろをさすっている。



「俺の部屋で若葉と二人きりとか、心臓を(はがね)にする修行でもさせられてるわけ?」



 えっ、今ってお家デートじゃなくて修行中なの?

 つっこみそうになり、口を手で押さえる。

「スパルタ家庭教師になりきって、若葉のことを意識しないようにしてたのにムリ! 心臓死ぬんだけど!」



 救急車出動案? 

 119番に電話をした方がいい?

 スマホはどこかなって……あっ!

 パスワードを思い出せないから、僕のスマホは開くことすらできないんだった。



「俺ばっか余裕ないって、マジかっこわりーじゃん」と、脱力したように机につっぷした紅亜くん。

「そっそんなことないよ、紅亜くんはすっごくカッコいいよ」と、両手で肩を揺する。