「俺への怒りと若葉に嫌われた悲しみをこぶしに込め、渾身の一撃をどうぞ」
俺の挑発に困惑したんだろう。
攻撃的な性格の俺が、弱い部位を自ら差し出すなんて思わなかったのかもな。
「なっ」と目を見開いた甘音が、ひるんだように固まった。
王子顔の横で、行き場をなくした拳が震えている。
俺たち双子の間に流れる、気持ち悪い無言時間。
甘音は苦しそうに唇をかみしめていて。
どんな感情がオマエのハートを痛めつけているんだか。
まっ、嫌いな奴の苦しみなんてどうでもいいけど。
「ほんと無理、俺の弟!」
勢い余る甘音の拳が俺の顔スレスレを通りすぎ、マットレスに沈みこんだ。
「あぁ、ほんと無理なんだってば! 紅亜のことも、若葉のことも!」
再び怒り声を上げながら敷布団を連打したかと思ったら、突然の電池切れ?
全停止したロボットみたいに無表情で固まって、ようやく口が少しだけ開いたかと思ったら「……悪かった」とぼそり。
「八つ当たりした……ごめん……紅亜……」



