真横に座っている魔王様の人差し指が、僕の瞳をつぶしそうな勢いで目の前に飛んできた。
「相変わらず綺麗な指」と感心してしまったのは、長くてごつごつして男らしい理想的な指だなって思ったから。
「ねえ紅亜くん、手を開いてみて。僕の手と重ねて」
「いっ、いま勉強中だろーが」
明らかに動揺した紅亜くんは、魔王様ってよりも照れ吠えするワンちゃんに見える。
「子供のころは紅亜くんも華奢だったのに、今は細マッチョって言うのかな、体に程よく筋肉がついててうらやましい」
「毎日鍛えてる」
「僕だって筋トレしてみたことあるよ。でもぜんぜん筋肉が成長しなくて、体質の問題かな」
「生ぬるいトレーニングだったってことじゃねーの」
「がんばったのに。腹筋バキバキに割りたかったのに。紅亜くんは腹筋割れてる?」
「俺の毎日の努力をなめるな。筋トレにランニングにプロテ……」
「紅亜くんの腹筋、触ってみたい」
「は? いっ今?」
「腹筋って鍛えるとどれくらい固くなるんだろう。撫でてみたいところがあるんだ、シックスパッドの凹みっていうか割れ目って言うか。指先でツーって」
「……若葉って……幼い顔してる割に願望えぐっ」
「なんで紅亜くんの顔が真っ赤なの?」
「おまえが俺の体を触るとか言うからだろ!」
「ちょっと触るだけなのに」
「俺の怒鳴りをスルーかよ。ったく、怒りがいのない奴」



