「気持ちは嬉しいけどごめん。」振られた。こうなることは分かってた。
でも、伝えずにはいられなかった。
「夏川は俺が転校すること知ってた?」急な話に驚く。
「、、、、、知らなかった。」
「父さんがアメリカに行くからワンチャン、僕も行く可能性があるということで丁度二週間後に。」
つい、うつむいてしまう。
「ごめん、迷惑だったよね。忙しいのに本当にごめん。」
謝るしかできない。
「いいよ、全然。どうせ暇だし。」そう答える君からは優しさがにじみ出ていて嬉しくて悲しかった。
初めてする友達らしい会話がこんな感じなんて変なの。目頭がきゅっと熱くなる。泣くな私。
ありがとうって言おうとした。でも私の中の欲が邪魔した。「君ともっと関わりたい」そんな欲だ。
そんな自分から出た言葉は自分でもクズだと思うほどサイテーな言葉だった。
「、、、、今日、誕生日なんだ、私。だから、一つお願いがあるの。難しかったら断ってもいい。でも、聞いてほしい。」
君は少し困ったような顔をした後、優しく微笑む。「、、何?」
「君の二週間をください。」
私の言葉に君は少し間を開けた。ああ、やっぱりダメか。
「、、、、、いいよ。」
「えっ?」
顔を上げる私に君は言う。「でも、付き合えない。それでもいい?」
ああ、なんて優しくてかっこよくて残酷な言葉なんだろう。
「うん、いいの。ありがとう。」沈黙が続く。それを破ったのは君だった。
「じゃ、また学校で。」走り出す君に夕日が重なる。
目に焼き付けたいのに滲んでよく見えなかった。
帰ろうと思って体を動かそうとしたけど足が動いてくれなかった。
視界の滲みがこぼれないように唇を強く噛み締める。やだ、泣きなくない。
唇から垂れた血と透明な楕円の雫がスカートの上で重なった。
「ひくっ、あっ、あっああ」涙が止まってくれない。抑えてもあふれ出してくる。止まれよ。ダサいじゃん。
そこからどうなったかは本当に覚えていない。
フッと目を開けるとそこはいつもの自分の部屋だった。
あれ、、、どうやって帰ってきたんだろ、、。時計を見ると午前6時29分。
昨日、あんなことを言ってしまったのを後悔する。小泉君は今の学校の友達とは離れてしまうのに。
それがとても寂しいことは頭では分かっていた。
でも、最後の最後で欲が出てしまった。もし、諦めてしまったら、一生手の届かないところに行ってしまう気がして。
むくりと起き上がって床を見つめる。
「、、、自分から言っておいてなんだって話だよねえ」
制服を着て鏡の前に立つ。
「、、学校行こ。」
鏡に映ったスカートはシミのせいかいつもよりちょっと無様にみえた。
ー学校にてー
「みどりー、おっは~」幼馴染のルウこと流河海(るかわうみ)がいつもの朝と変わらない寝ぼけ眼で挨拶。
「おはよ、ルウ」
鞄を置いて教科書やペンケースを出す。
見回すと教室の後方の窓際に彼もいた。仲良しの佐々木くんと一緒に。
よかった、今まで通りだ。ホッとしたその時、小泉くんがこっちを向いた。
つい、反射的に目をそらしてしまった。
恐る恐る顔を上げるともう彼の目は私を見ていなかった。
「、、何やってんだろ、私。」
「ん?なんか言ったーみどり?」
ルウがキョトンとした顔で私を見る。
「ううん、何にも!」
『ほら、お前ら!もうSHR始まるぞー』
担任の中山先生が扉を乱暴に開け入ってくる。
慌てて席について教卓の方を見る。
先生の話は耳に入らなかった。
「、、結局いっかいも話せなかったなぁ。」もう放課後だ、、、。自分の勇気のなさに我ながら落ち込む。
小泉君はあと13日でいなくなってしまうのに、このまま何もできないまま終わってしまいそうな気がした。
放課後、皆がいなくなった教室の黒板には7限目の物理の名残があった。
黒板けしを手に取り、チョークの後を消していくともとの緑色にもどり始める。
「ねえ」
声がした方を見ると、そこには小泉君がいた。
「な、、に?」びっくりして声が上手く出ない。
「いつも黒板キレイにしてくれてたの夏川なんだね、ありがとう」
お礼を言われるとも思わなかったし気づいてくれるとも思ってなかった。
「こちらこそ、、そう言ってくれてありがとう」
「じゃ、それだけ」そう言って小泉君は扉を閉め教室から出ていってしまった。
呼び止めればよかったのに、またダメだった。
「、、、私も帰ろ」
教科書やペンケースを鞄にしまい、帰ろうとしたその時だった。
ガラリ 扉があいた音がした。
「あと13日、無駄にすんなよ。せっかくのバースデープレゼントなんだから。」
小泉君と目が合う。今度はちゃんと見れた。薄茶色の綺麗な目。
「これ、言い忘れたから来ただけ。それじゃ、また明日」
扉が閉まる音と彼の足音が遠ざかっていく。
言葉にならない。私は今どんな顔をしてるんだろう。
もし真っ赤ならそれは夕日のせいだけじゃない。
ねえ、小泉君。
やっぱり私、君が好きだ。
でも、伝えずにはいられなかった。
「夏川は俺が転校すること知ってた?」急な話に驚く。
「、、、、、知らなかった。」
「父さんがアメリカに行くからワンチャン、僕も行く可能性があるということで丁度二週間後に。」
つい、うつむいてしまう。
「ごめん、迷惑だったよね。忙しいのに本当にごめん。」
謝るしかできない。
「いいよ、全然。どうせ暇だし。」そう答える君からは優しさがにじみ出ていて嬉しくて悲しかった。
初めてする友達らしい会話がこんな感じなんて変なの。目頭がきゅっと熱くなる。泣くな私。
ありがとうって言おうとした。でも私の中の欲が邪魔した。「君ともっと関わりたい」そんな欲だ。
そんな自分から出た言葉は自分でもクズだと思うほどサイテーな言葉だった。
「、、、、今日、誕生日なんだ、私。だから、一つお願いがあるの。難しかったら断ってもいい。でも、聞いてほしい。」
君は少し困ったような顔をした後、優しく微笑む。「、、何?」
「君の二週間をください。」
私の言葉に君は少し間を開けた。ああ、やっぱりダメか。
「、、、、、いいよ。」
「えっ?」
顔を上げる私に君は言う。「でも、付き合えない。それでもいい?」
ああ、なんて優しくてかっこよくて残酷な言葉なんだろう。
「うん、いいの。ありがとう。」沈黙が続く。それを破ったのは君だった。
「じゃ、また学校で。」走り出す君に夕日が重なる。
目に焼き付けたいのに滲んでよく見えなかった。
帰ろうと思って体を動かそうとしたけど足が動いてくれなかった。
視界の滲みがこぼれないように唇を強く噛み締める。やだ、泣きなくない。
唇から垂れた血と透明な楕円の雫がスカートの上で重なった。
「ひくっ、あっ、あっああ」涙が止まってくれない。抑えてもあふれ出してくる。止まれよ。ダサいじゃん。
そこからどうなったかは本当に覚えていない。
フッと目を開けるとそこはいつもの自分の部屋だった。
あれ、、、どうやって帰ってきたんだろ、、。時計を見ると午前6時29分。
昨日、あんなことを言ってしまったのを後悔する。小泉君は今の学校の友達とは離れてしまうのに。
それがとても寂しいことは頭では分かっていた。
でも、最後の最後で欲が出てしまった。もし、諦めてしまったら、一生手の届かないところに行ってしまう気がして。
むくりと起き上がって床を見つめる。
「、、、自分から言っておいてなんだって話だよねえ」
制服を着て鏡の前に立つ。
「、、学校行こ。」
鏡に映ったスカートはシミのせいかいつもよりちょっと無様にみえた。
ー学校にてー
「みどりー、おっは~」幼馴染のルウこと流河海(るかわうみ)がいつもの朝と変わらない寝ぼけ眼で挨拶。
「おはよ、ルウ」
鞄を置いて教科書やペンケースを出す。
見回すと教室の後方の窓際に彼もいた。仲良しの佐々木くんと一緒に。
よかった、今まで通りだ。ホッとしたその時、小泉くんがこっちを向いた。
つい、反射的に目をそらしてしまった。
恐る恐る顔を上げるともう彼の目は私を見ていなかった。
「、、何やってんだろ、私。」
「ん?なんか言ったーみどり?」
ルウがキョトンとした顔で私を見る。
「ううん、何にも!」
『ほら、お前ら!もうSHR始まるぞー』
担任の中山先生が扉を乱暴に開け入ってくる。
慌てて席について教卓の方を見る。
先生の話は耳に入らなかった。
「、、結局いっかいも話せなかったなぁ。」もう放課後だ、、、。自分の勇気のなさに我ながら落ち込む。
小泉君はあと13日でいなくなってしまうのに、このまま何もできないまま終わってしまいそうな気がした。
放課後、皆がいなくなった教室の黒板には7限目の物理の名残があった。
黒板けしを手に取り、チョークの後を消していくともとの緑色にもどり始める。
「ねえ」
声がした方を見ると、そこには小泉君がいた。
「な、、に?」びっくりして声が上手く出ない。
「いつも黒板キレイにしてくれてたの夏川なんだね、ありがとう」
お礼を言われるとも思わなかったし気づいてくれるとも思ってなかった。
「こちらこそ、、そう言ってくれてありがとう」
「じゃ、それだけ」そう言って小泉君は扉を閉め教室から出ていってしまった。
呼び止めればよかったのに、またダメだった。
「、、、私も帰ろ」
教科書やペンケースを鞄にしまい、帰ろうとしたその時だった。
ガラリ 扉があいた音がした。
「あと13日、無駄にすんなよ。せっかくのバースデープレゼントなんだから。」
小泉君と目が合う。今度はちゃんと見れた。薄茶色の綺麗な目。
「これ、言い忘れたから来ただけ。それじゃ、また明日」
扉が閉まる音と彼の足音が遠ざかっていく。
言葉にならない。私は今どんな顔をしてるんだろう。
もし真っ赤ならそれは夕日のせいだけじゃない。
ねえ、小泉君。
やっぱり私、君が好きだ。



