嵐のあとの綺麗な空

久しぶりの再会。
最初は何を話せばいいか分からなくて、
とりあえず昔のグループの話で盛り上がった。

「あのときのバカ騒ぎ覚えてる?」
「拓海が酔って泣いた夜!」
笑いながら話してたけど、颯太の様子がどこかおかしい。

真央と光輝が「ちょっとコンビニ!」って空気を読んでくれて、
2人きりになった。

沈黙が落ちて、
颯太がぽつりと口を開いた。

「俺さ……若年性アルツハイマーになったんだよね」

一瞬、頭が真っ白になった。

「だからさっきも、昔のことところどころ覚えてなくて……」

涙が止まらなくて、
「じゃあ……私のことも、いつか忘れちゃうってこと?」

颯太は首を振って、
優しく笑った。

「それが不思議なんだけど、
 凪咲ちゃんとのことは全部、鮮明に覚えてるんだ」

「夜景のジャケットも、寝落ち通話も、
 助手席に乗ってくれたことも、
 全部ちゃんと頭にある」

「だから大丈夫。
 凪咲ちゃんのことだけは、絶対忘れない」

私は泣きじゃくりながら、
「約束だよ……」って呟いた。

颯太は「うん」って頷いて、
私の頭をそっと撫でてくれた。

彼氏と別れたことは、言えなかった。

その日は、昔みたいに軽く手を振って別れた。

後で光輝から聞いた。

帰りの車で、颯太はずっと号泣してたって。