嵐のあとの綺麗な空

ねえ、知ってる?
私、男の人の助手席に乗るの、ほんとは死ぬほど苦手だったんだ。

2人きりでご飯食べるのだって無理。
目が合ったら顔が熱くなって、すぐに逃げ出したくなる。
そんな私だったのに――

「俺の車、乗る?」

その一言に、
なんでだろう。
「乗る」って、即答しちゃった。

自分でもびっくりした。
心臓がバクバクしてるのに、足は自然にそっちに動いてた。

ドアを開けた瞬間、ふわっと彼の匂いがした。
なんか甘くて、でも少しタバコ混じりで、大人っぽい匂い。
その車の中に流れてた曲が
私が誰にも言ってなかった、大好きなバンドの曲だった。

「え……知ってるの?」

思わず声が漏れた。
運転席の彼は、少しだけ笑って
「めっちゃ好きなんだよね」って言った。

その声が、なんだか優しくて。
緊張してるのに、安心する。
変な感じ。

窓の外を流れる夜景と、
曲が繋いでくれた会話と、
隣にいる穏やかな横顔。

――これが、全部の始まりだった。

私の人生を、大きく揺らして、
最後には一番幸せな場所に連れてってくれた、
あの“嵐”の人の話。

まだ名前もちゃんと知らない。
でも、なぜかこの人が
私の運命を、全部変えるってわかった。

あの夜、私は
助手席に乗るって言って、
自分の未来を、完全に変えちゃったんだ。