甘々とロマンス中毒

もう一度、頭を撫でる。
一咲の瞳からビー玉に似た淡い涙が溢れた。ぽろぽろと雫を指で掬って抱き寄せると、ぎゅっと抱きしめ返される。

一咲の鼓動が大きくなるにつれ、こんなの何の意味もないのに自分の鼓動も大きくなるのがわかった。

「あやちゃ…ん?どうしたの?(しんぞーの音、私と同じで、はやい……)」

「ん。いーから、このまま……」

︎︎𓂃⟡.·

16歳の頃、付き合った彼女は、一咲のことを“今だけだよ”とあっけらかんに笑った。

“なんで、あやみがあの子の好きを間に受けてるの?ただの憧れにすぎないでしょ。大きくなれば言われなくなるよ”とも言われた。

そんなもんか、と納得したフリをして。
仕事の忙しさを言い訳に距離を置いて。

だけど『俺以外のしょーもない男に引っかかんないで』と、こころのうちでは、一咲に会えない間、余裕なんてなかった。

「(ダサすぎだろ)」

ああ。そう言えば、先日、久しぶりに顔を合わせた菖には不意を突かれたんだっけな。

“ラーメンの替え玉券、貰えなくなるの嫌なんだわ”
“だから、咲から逃げんなよ”と。


今まで割り切った大人の付き合いや、付かず離れずのいい加減な恋愛ばかりしてきた奴が、いつかあの子に撃ち抜かれる日がくるんだろうか。

そんな、くだらないことばかり考えていたけど…なんだよ。とっくに撃ち抜かれてんじゃん。

「やば……」

長く吐いた息さえも、一咲に届いてませんようにと願い、首筋に顔を埋める。


年下は恋愛対象としてみてなかったのに、一咲があまりにも可愛すぎるから。