甘々とロマンス中毒

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

「一咲」

「…ハイ」

宙に舞っていた意識が呼び戻され、顔を上げた。

鼓動のリズムがしとしと音を変えて「あやちゃ…なあに?」と聞き返す私は、心配と不安と、少しの毒に苛まれている。

「………(菫花さんを追いかけなくていいの?)」

問いかけた言葉を胸中に留めた。


「俺のこと話してたの?」

「…し…してないよ。あやちゃんのことなんか、話してない……」

「……へえ」

「(疑われてる…?)」


伏せた視線を上向きに。
くしゃ、と掻いた艶やかな金髪を耳に掛ける。シルバーのヘリックスが光った。

「だったら」

そう、呟くあやちゃんが、私に向き合った。

俯きかけた顔が柔らかな掌に包まれる。綺麗な指先が、涙袋の下を撫でて、溢れる涙を掬い取る。

密度の高い睫毛に囲まれる、煌めきを潜めた黒曜の双眸に吸い込まれそう。


「なんで泣きそうな顔してんだよ」

「…あやちゃん、の……ン」

触れる甘い熱は、私が喋り出すのと同時に、すっと引いた。あやちゃんが掌を離したからだ。

「コンタクトがズレたの。…でも……もう、治ったから大丈夫」


へらっと作った笑みは、簡単に見破られた。


「一咲、我慢しないで泣いていーよ」