甘々とロマンス中毒

「ねぇ。あやみくん」と言う、菫花さんの色素の薄いブラウン、二重を縁取った大きな瞳に薄らと涙の膜が張っていることに気づいたの。

悲しそうに傾いて、脆そうで、淡く揺らめいている。

山型に閉じた唇を更に噛み締める。

菫花さんの前で、あやちゃんを好きって気持ち、上手く隠せれたらいいのに。互いの好きを半分こできたらいいのに。

どうして、二人ともあやちゃんなんだろう。
どうして、あやちゃんは一人しかいないの?

駆け巡る浅はかな思考。お願い、私の頭から出ていって。私を支配しないで。

「(失礼なことを考えてバカみたいだ)」

赤らんだ頬に生温い涙が伝った。
指先で優しくなぞれば、ぴり、と肌が痛い。

「菫花」

いつもより、ずっと低いあやちゃんの声に、とくとくと鼓動が速くなる。

……なにを言うの?

淡々と告げる、真剣で迷いのない眼差しに息を呑む。たくさんの音が溢れるゲームセンターの空間で、私の耳はあやちゃんの言葉だけを掬った。


「今の俺は、一咲しか見てないよ」


え?


瞳が瞬き、映る景色がぼやける。
斜めに見上げた、あやちゃんの横顔。耳の先まで覆った金髪、襟足まで伸びた後ろ髪と、美麗な顔にかかる横髪に隠れて、その先の表情がわからない。

———…と、あやちゃんを見つめ続ける菫花さんが、ぎゅうっと目を瞑り、鼻を啜った。


「……うん。知ってる」


絞り出した言葉は、それ以上なくて。

黙ってその場を去る小さな背中が、しゃんとしてる“風”に歩いてるのを、ただ見つめることしかできなかった。