「ん。…そう」
前髪をくしゃと掻き上げたあやちゃんがシルバーの丸縁眼鏡を外した。私はこくりと頷いて、視線がそれていくのを、視界の端で追いかける。
「…………(やっぱり一咲は子どもだって呆れた?あやちゃん、怒ってる?)」
あやちゃんに会ったとき、弾んだ恋心。
今はどろっと黒い塊に溶けて、気持ちが沈んで、時間だけが流れていく。
このまま、なにもかも、うやむやになっちゃうのかなぁ。
目尻に溢れる涙。あやちゃんに知られないよう、指の腹でそっと拭った。
「あやみくん、これ取って」
菫花さんが指差すのは、一点に狙っていた、わかめのぬいぐるみストラップ。ぬいぐるみたちの山に埋もれ、横に寝転んでいる。
ガラスの中を覗くあやちゃんは、少し腰を屈めて。
「自分でできんだろ。後ちょっと動かせば取れそうじゃん」
なんて、平然と言いのける。
「できないもん」
後毛のない、綺麗なポニーテールが項垂れる。
伸びかかった菫花さんのしなやかな指先。触れる寸前で、あやちゃんがすっと腕を引いて拒否を示した。
「ごめんなさい。いつもの癖で…」
「もう、こんなことするな。何年も前から、ずっとごめんって言ってるだろ」
低くて少し冷たい、気怠げな声が空気に舞う。
「…なにもないから凹むし、なにもないから、こんなことしかできないの」
「…………」
「わたしじゃダメなの?(どうして一咲ちゃんなの?って、言葉が出ない……)」
前髪をくしゃと掻き上げたあやちゃんがシルバーの丸縁眼鏡を外した。私はこくりと頷いて、視線がそれていくのを、視界の端で追いかける。
「…………(やっぱり一咲は子どもだって呆れた?あやちゃん、怒ってる?)」
あやちゃんに会ったとき、弾んだ恋心。
今はどろっと黒い塊に溶けて、気持ちが沈んで、時間だけが流れていく。
このまま、なにもかも、うやむやになっちゃうのかなぁ。
目尻に溢れる涙。あやちゃんに知られないよう、指の腹でそっと拭った。
「あやみくん、これ取って」
菫花さんが指差すのは、一点に狙っていた、わかめのぬいぐるみストラップ。ぬいぐるみたちの山に埋もれ、横に寝転んでいる。
ガラスの中を覗くあやちゃんは、少し腰を屈めて。
「自分でできんだろ。後ちょっと動かせば取れそうじゃん」
なんて、平然と言いのける。
「できないもん」
後毛のない、綺麗なポニーテールが項垂れる。
伸びかかった菫花さんのしなやかな指先。触れる寸前で、あやちゃんがすっと腕を引いて拒否を示した。
「ごめんなさい。いつもの癖で…」
「もう、こんなことするな。何年も前から、ずっとごめんって言ってるだろ」
低くて少し冷たい、気怠げな声が空気に舞う。
「…なにもないから凹むし、なにもないから、こんなことしかできないの」
「…………」
「わたしじゃダメなの?(どうして一咲ちゃんなの?って、言葉が出ない……)」



