甘々とロマンス中毒

菫花さんのまあるい瞳が揺蕩った。

“言っちゃった”と、心で呟けば私の胸の奥が締め付けられ“予想はしてたので”と、言いかけたものを喉の手前で引っ込める。

「わたし…」そう、紡いだ菫花さんの言葉は、騒音に隠された。ゆったり開く、唇の動きだけを見つめて。


「——————………」


心に引っかかりを覚えたとき、頭上に落ちてきた声に全てを奪われた。


「なにしてんの?」


私はその低い声をよく知っている。


「(……あやちゃん!!!)」


瞬きひとつ。斜めに見上げた顔が、困惑した表情をのせるあやちゃんにぶつかった。
冷えた背中に、熱い体温が伝わるのは、あやちゃんに掌を握られて引き寄せられたからだ。

「菫花、今日はよく会うな」と、他人行儀に短い息を吐いたあやちゃんに「これも、たまたまだから」と、菫花さんはそっぽを向く。

「(髪染めて更にかっこよくなってる。……あ。ふたりの手……)」

繋がれた指先から、熱が分け与えられる。離そうとすれば、ぎゅっと更に包まれる。あやちゃんが私を覗き込んだ。


「一咲、うさぎは?」

「……っ!」

あやちゃんに菫花さんの影が重なり、二人の仲を疑ってしまう。俯き加減に答えた。

「…らない」

前髪の隙間から窺うあやちゃんは、眉根をぐっと狭めて私の続きを待っている。

「?」

「も、だいじょーぶ。……いらない」


あやちゃんの力が緩んだ。私の手はするりと逃げて、ショルダーバッグの紐を掴む。

今の私は素直じゃなくて、意地っ張りで、つっけんどんで、ぜんぜん、可愛くない。自分で口にしたくせに、言ったそばから勝手に傷ついてるの。

「(どうしよう。また涙が……)」