甘々とロマンス中毒

微かに震える菫花さんの唇が開いた。
私の心臓はぎゅっと掴まれ、身構えた体が強張る。

「あのっ、すみれさ……(ん、は)」

言わなきゃ…っ!

「いさくちゃ———…あ……」

勢い走った言葉が瞬時に途切れたのは、菫花さんの視線をめいっぱい追いかけて、振り返ったところに…

「(あやちゃんだ)」

あやちゃんがいたから。

両替してくると言ったきり戻って来ないあやちゃんは、機械の前で女の人たちに囲まれている。

眉尻を困ったように下げた、外行きの笑み。口を噤んだ私は、その近い距離にモヤッとなって。

「大学でもいつもあんな感じで、知らない学部の女の子たちに話しかけられるの。元芸能人の幼なじみが側にいて、一咲ちゃんも大変だね」

菫花さんから言われたコトに、虚勢を張ってしまった。

「あやちゃんと一緒にいるの楽しいから、大変じゃないです(…わ、声にトゲが…。子どもっぽすぎてヤダな。……一体、なにを張り合ってるんだろう)」

ぐす、と鼻を啜る小さな音が鳴る。眉間に力が入るのはどうして?横にそらした顔を戻すと、菫花さんが私を見据えていた。

束の間の沈黙が破られる。


「わたし、一咲ちゃんのこと知ってる。前にも会ったことあるよね?」

「!」

「一咲ちゃんが小学生だった頃……。覚えてないかな?」

胸がばくばく鳴る。

もしかして———

「す、菫花さんは、あやちゃんの彼女だったんですか!?」


聞いた途端、潤んだ瞳から大粒の涙が溢れ出た。