甘々とロマンス中毒

こころちゃんの可憐なナレーションから始まり、早速、私の出番がやってくる。「ファイト!」「いってらっしゃい」と、見送られて深呼吸をひとつ。

舞台に立った瞬間、足取りがふわりと軽くなる。照明がチカチカと眩しい。あやちゃんと瞳がぱちんと交差したの。沸騰しそうなくらい、熱を帯びていく。顔も体もあつい…。首元で結んだマントのリボンを、きゅっと指先に絡めた。

演技しなくちゃいけないのに、演技どころじゃなくて。


「……ぁ」

左端の袖口からカンペが出された。

『いさくちゃんセリフ!!』『表情管理』

「…っ。こんにちは、オオカミさん」
「こんにちは、可愛い赤ずきん。どこへ行くの?」
「おばあさんのところへ行くの。おばあさんは森の奥に住んでるのよ」
「それはいいね。おばあさんも、きっと喜ぶよ」


菖くんとの掛け合いが、事なく進む。
いっぱい練習した成果なのか、セリフを口にすると緊張が緩まるの。

立ち位置を正面に戻したとき、あやちゃんと信玄さんの会話が、微かに耳へ触れた。


「めっちゃ可愛いじゃん」

「だろ」

ハッ…!私のことだ!!

ボフッ。と、ほっぺが林檎色に染まる。赤ずきんの色だ。ほんとは、今すぐにでも舞台裏に隠れたいけど…そうはいかないから。

「まぁ、綺麗なお花………」
『咲、続き』

菖くんに言われて、赤ずきんモードに変わる。

「ぉ、ばあさんに持って行こうかしら」


袖口にはけた。場面転換で、再びナレーションが入る。今度は菖くん単独のシーンだ。