甘々とロマンス中毒

𓈒 𓏸𓈒𓂂𓂃♡

文化祭当日、です。

一日一回公演の『赤ずきんとオオカミ』
開催場所は体育館で、宣伝と呼び込み効果もあり、お客さんが程よく入っている。


「緊張しないで……大きく息を吸って」
「深呼吸〜〜…っ」
「ドキドキしてきたぁ」


本番前の袖口では、こころちゃん、美羽ちゃんたちが主演の私を囲んで、お互いの緊張を解している。
「大丈夫…だいじょーぶ」そう言い続ける美羽ちゃんの、台本を握りしめてる手が震えるのを見て、私は掌を包んだ。


「美羽ちゃん…!頑張るね」
「一咲ちゃん…!(いつになく超本気モード!)」

口から、しんぞーが出そうだけど…っ。

「まあ、なんとかなるだろ。失敗しないように、がんばろーね。一咲チャン」


菖くんにポンッと肩を叩かれて振り向く。
こんなときでさえ、私の幼なじみは自分ペースである。


「オレはヨユー」

菖くんは自信満々にフッと笑う。
私はふん、と菖くんからそっぽを向ける。

「菖、それは逆効果だから」

千花くんは呆れている。

菖くんに対して、私のマシュマロほっぺは、むぅ〜と膨らむ。焼きマシュマロになってしまいそうなところで、牧ちゃんがみんなを集めた。

「やれることはやったから、今までの成果を出そう!」


開演まで残り数分…———

「(めっちゃ来てる!!ひゃあっ)」

舞台裏から、顔を覗かせた。
思ったよりいっぱい……じゃなくて…っ。後ろの席まで埋まってる。

「(パパとママはお仕事だから来てないけど…あやちゃ……)」

視線をくまなく動かす。

「(あやちゃん!)」

見渡していると、前列の席であやちゃんが腰掛けているのを発見。私の王子さまは、薄暗い体育館でも一層、煌めいている。

あやちゃんを挟んで、右に伊吹さんと左に信玄さんがいる。
途端、鼓動が早鐘する。“口からしんぞー”が現実になりそう。ドキドキがおさまらない。


「げ…来てんじゃん。咲、マジで呼んだんだ」


不味そうな表情をのせる菖くんが、私の肩口で息を吐いたの。牧ちゃんの合図と共に幕が上がった。