甘々とロマンス中毒

衣装班の千花くんに渡されたのは、赤ずきん用のベージュ色の籠バッグと、鮮やかなチェリーレッドのフード付マント。頭からすっぽり被って、首元でリボンを結んだの。背中までふわっと広がる短めのマントが可愛い。

同じ衣装班の牧ちゃんが声を弾ませた。


「わぁ〜〜っ。一咲ちゃん、可愛い〜〜!すっごく似合ってるよ。ねっ、千花くんもそう思うよね」

俯き加減の千花くんが、長い前髪の隙間を縫って私を眺める。射抜くような眼差しに、びくっと肩が上がったんだ。身構えた私は視線を斜め下に動かした。

「ン。かわいー…よ」

あれ…?千花くんの声、いつもと違う。
少し震えてる?

こてんと、胸中で首を倒す。

「うんうん。だよねぇ」

ぎこちなく揺れる千花くんの声音と対照に、牧ちゃんの口調は明るくて。

「ありがとうございます」

引っかかりは残るものの、ふにゃりと頬を緩ませて私は笑った。

「レース付のフードにして正解だね。あっ!バッグは小さめの方がいいかなぁ。一咲ちゃん、持った感じどう?」

「ちょっと大きいかも」

「おっけー。じゃあ、新しいの調達してくるね」

「ウン。よろしくお願いします」


「次は狼の番だ」と、牧ちゃんは菖くんを呼びに行って。私に向き合った千花くんが、籠バッグを回収する。フードも脱いで千花くんに渡す。

「一咲ちゃん、ありがと」淡々と話す千花くんに、いつもの柔和さが欠けている。なんでだろ…?と、頭上にハテナが乗る。千花くんが不意に私を見やった。


「さっき、言おうとしてたのに止めてごめん」

「な…なにを……」

「あやみさん」

息を大きく呑んだ。

「(きゃああ)」

あやちゃんの名前を出されて、ボフッ!と熱が爆発した。

「やっぱり。正解か」


千花くんが睫毛を伏せる。瞳を覆うように薄ら影が広がる。