甘々とロマンス中毒

立ち上がったあやちゃんはリビングを出た向こう側で、菖くんと話をしている。

キスをする前の余韻が離れず、熱っぽい吐息が自然と漏れる。ぺち、と掌を頬に添えた。

私の体はずっと甘い温度に魘されているみたい。

ゆらり。声の聞こえる方へ視線を移動した。
扉に背凭れているのか、大きな影が目について意味もなく、胸が高鳴った。


「は…!?来る…?なに言ってんだよ」

クールなあやちゃんが驚いている。
どうやら、お取り込み中らしい。

「とにかくダメだから」
「(あやちゃんの念押し…)」

ああ見えて菖くんは曲げないところがあるし……大丈夫かなぁ。すごく、心配…。

「そ。わかった?信玄に頼んどく」

途切れた声を最後にもう一度、ブランケットを頭まで被せて自身を覆う。しばらく経ってあやちゃんが戻った。

パッと顔を持ち上げる。すぐさま尋ねたの。

「菖くんなんだったの?」

「バイト終わりに寄りたいって」

「そっかぁ」

ブランケットをか弱く握り、上目遣いにあやちゃんを見た。

「…わたし、いていいの…?お邪魔になるなら、早く帰るのが…」

遠慮気味に言葉を巡らせる。むぅ…と、唇を尖らせた。続きが止まる。「やっぱり…」と、言ったそば「いさく」と、まろやかな低い声で呼ばれた。

「それは、別の日にしてもらった。今日は一咲と一緒にいたいし」

そう言って、後ろからきつく抱きしめられた。
あやちゃんの息が首筋を滑る。

「いさくはあったかいな」

「ママにもよく言われる」


ふふ、とあやちゃんの笑い声が微かに耳先に触れる。振り向いて、お互いの視線が交差して。


「あやちゃ…ん。さっきの続き、する?」

「…ん」


恋の病におかされる。

あやちゃんの眼差しを合図に、私はゆっくり瞳を伏せた。柔らかくて温かな口付けが降り注いだ。

ちゅ。と、ひとつ音がした。全身が溶けていく感覚がする。

「(このまま、先のことも…あやちゃんとしたい)」

甘やかなキスは、重ねる毎に深いものへと変わっていく。