甘々とロマンス中毒

私は満足に口元を綻ばせ、テレビを真っ直ぐ見つめるあやちゃんを盗み見る。

黒髪のあやちゃんは久しぶりだ。
蜂蜜色に染まった金髪はキラキラ王子さまみたいでとっても素敵だったけど、黒髪は元々のかっこよさが洗練されて、より良いの。

光の粒に照らされ、黒曜が青みがかっている。
うっとり眺めて、これ以上は心臓がもたないと判断したところでブランケットを頭まで被った。

その一瞬に気づいたあやちゃんが、私を追いかける。視線の隙間から覗かれた。


「襟足は切らなくて正解?」
「ハイ…!それはもう、もちろんっ」

「伸びたから整えようと思ってたけど、一咲がいいなら暫くはこのままにするわ」

「うん…!伊吹さんくらい長いのも好き。あやちゃんはどんな髪型でも似合うんだろうなぁ。ふふ」

あやちゃんが前髪を掻き上げた。

「括るの面倒なんだよな。後、夏は暑いから我慢できねえ」

「ン〜〜〜」

「それに、長髪だと伊吹に似るだろ。アイツが揶揄ってくるの目に見える」

「そこをなんとかっ」

首元を、あやちゃんのしなやかな指が掠めた。

「ひゃ、ぁ…っ」

「俺は一咲の髪、長いのが好き」
「……!」
「これで、おあいこ」

「〜〜〜っ」

意地悪されてるのわかってて、胸をぽかぽか叩きたいのに、早鐘する恋音が勝ってできないでいるんだ。

私はとことんあやちゃんに弱い。
だけど、意地悪されるのは嫌じゃない。

あやちゃんが私の頬を柔らかに摘んだ。

「…………(あ……)」


この合図———

唇が触れようとする。
目を瞑るタイミングを探って、薄らと閉じていく。

ピピピピ。
機械音に呼び出されて、ぱち、と瞬きしたの。

あやちゃんはバツが悪そうに「悪い。菖から電話」と、スマホを手にした。