甘々とロマンス中毒

手を引かれる温度を半分こしている。
あやちゃんの横顔を上手く見れない私は、瞳を薄ら伏せて、辿々しく歩む自分の足元をぼんやり眺めた。

ゆら、ゆら。視界が霞んでいく最中、鼓膜に低い声音が吹き込まれた。


「一咲」
「さっきの人は……」

言葉を遮るように、私の歩幅は狭まった。

あやちゃんに会って、今日はなにを話そうかな。なんて、昨日からずうっと考えて楽しみにしていたのに、私の口から最初に飛び出したのが女の人のことって。

「(ヤになっちゃうなぁ)」

菫花さんのときと言い、やっぱり私は子どもだ。

「なんでもない…。ウン。あやちゃん行こっ」

自分に言い聞かせる。
無理に作った張り切りと明るさが、胸の真ん中でぽこんと浮かんでいるのだ。

あやちゃんが半歩前に出たの。
下がった視界が持ち上がる。

「一咲以外の子、見る暇ない。だから、拗ねんなって」

幼さの混じるヤキモチを簡単に掬われた。
全て見透かされてるようで恥ずかしい反面、気持ちは晴れていく。

うんうん、とささやかに頷いたら、あやちゃんが優美に微笑む。こころがきゅーっと締めつけられて甘酸っぱい。

「で、この後どうする?」

「あやちゃんと一緒なら、どこでもいーよ」

へらりと笑いながら言うと、あやちゃんが私に視線を流し、立ち止まり向き合った。

「映画行こうと思ってたけど、予定変更。一咲、今日は早く帰らないとダメな日?」

「ウウン」

「じゃあさ」そう、あやちゃんが一言置く。

「俺ん家、来て」