甘々とロマンス中毒

オフィス街だけあって、行き交う人たちはスーツを身に纏い颯爽と歩いている。スマホを耳に当てがい忙しなく誰かと話している人や、腕時計に目を遣って駆け足になる人など、様々だ。

制服姿の私だけ違和感があるの。

「(高校生が混じってるの場違いっぽい…?)」

そう、落ち着かないまま思いながらも、今日のためにおめかしした格好に爪先まで視線を這わせる。

ピンクブラウンの髪はいつものポニーテールにせず、ハーフアップにまとめた。上品なレースのついたリボンで結んで、毛先はゆるっと巻いて。
私が描く大人っぽいを演出してみたけれど、溶け込んでいるかはわからない。

「(アッ!正面で待つんじゃなくて、後ろから抱きついて驚かせちゃう…とか?ん〜〜〜…ダメだぁ。あやちゃんを喜ばせたいって気持ちもあるし、どっちが正解だ?むむ…)」

昨日、こころちゃんと恋バナをしてから浮き足立つ感覚が離れないでいる。

くらくら、ふわふわ、ぽわん。
なんて、いろんな感情が渦巻いて私の全てを支配していくようで。

“あんなお話”聞いちゃった後だから、変に意識しちゃうなぁ。

私にはまだ早いのに……。もう、次のことを考えてるなんて不純すぎるよ。

「(ほっぺ、あついや…。チークで誤魔化したい)」

パタパタ。手で風を仰いでいると、ロビーから人影が見える。ピコンッと頭上に浮かぶのは閃き。私の視線がすぐさま動くのだ。

スーツ姿のあやちゃんが目に飛び込んだの。
瞬間、私の瞳に煌めきが宿る。
次いで、柔らかくて甘い蜂蜜色の金髪が……。


「!!(……黒髪に戻ってる)」

わぁあああっ。か………っ、こいい。ひゃあ。

「あやちゃ…………」


名前を紡いで、飛び出そうとして。手を振ろうとした右手が落ちる。


「雪村くんお疲れ様!」


あやちゃんの背後から現れたのは、背筋の伸びた綺麗な女の人だった。