甘々とロマンス中毒

「つか、一咲、走ってんじゃん」
「えへ」

ピーチ色のリップグロスを薄く塗った唇が、だらしなく緩む。ふふ、ともう一度、胸いっぱいの幸福感に満たされて笑うの。

そんな私に、あやちゃんが「悪い子だな」と言いながら、繋いだ指を解いて。柔らかな手の甲を、私の頬にぴたっと当てがった。


「ん…(ひゃああっ)」

甘い熱に魘されて、思わず目を閉じる。

「あっつ」

あやちゃんの手、冷たくてきもちいー…。

「あの〜〜っ。恥ずかしいから、そろそろ……」

「ああ」

切れ長の瞳が私を一瞥した。『そうだった』と、あやちゃんが独り言を囁く。
すとんと落ちないハテナの引っかかりに、なんだろ…と、こころの奥で首を傾げた。

「一咲」
「?」

「約束のぎゅう。……いい?」

「…………」
「…………」

「はい」

ふ、とあやちゃんが悪戯に微笑む。

「じゃあ、遠慮なく」


逞しい腕が腰に回る。男の人の強い力が私を抱きしめる。あやちゃんの腕の中はローズマリーの香りが漂って、ドキドキが止まらないでいるのに、頭の後ろを優しく撫でられると、すごく安心する。

とくとく。しとしと。ことこと。
たくさんの音が混ざり合う。
どっちの鼓動なのか、もう…わかんないや。

あやちゃんが髪の一房を掬い上げて口付けた。

「待たせたお詫びに、一咲のしたいこと全部付き合うよ。どこ行きたい?」

そう言われ———ガチャガチャを回して。本屋に寄って。雑貨を見て……ココではあやちゃんの家に置く、一咲専用のマグカップやブランケットを買ってくれたの。それから、ルームウェアも。

気になってた保護猫カフェは予約が埋まっていたから、併設のカフェでパフェを食べた。次、行こうねって約束したんだ。

外で会うデートは、どちらから言わずとも、自然とお家デートに切り替わった。