甘々とロマンス中毒

菖くんの唇の端が、くすりと上がっているのを見逃さなかった。意地悪な幼なじみは私で遊ぶのが趣味のようだ。だって、ほら…。


「はは、オモシロ。兄貴に見せたいから、写真撮っていい?」

子どもじみた悪戯で挑発する。

「ダメに決まってるでしょ。あやちゃんに送ったら、菖くんの幼なじみやめるから」

「そしたら、兄貴の幼なじみもやめることになるな。ふ…。出来るもんなら、やってみ?」

「……っ!あやちゃんはトクベツだもん」

「答えになってねえ」

「(ン〜〜〜…。“ああ言えばこう言う。”菖くんの相手するの、ちょっと面倒になってきた)」

頭も体力も持ってかれる。疲れるなぁ。
ふう。と、息を溢した。

「咲にもう、ちょっかい出せなくなると思ったらつまんねえ」

「ふん」

右の頬に不満を溜める。それでも収まらないため左も追加する。一咲特製、爆弾たこ焼きの出来上がり。ひまわりの種をもぐもぐするハムスターでは、決してない。

「うわ、その顔…かわい……」

「?」

「…くは、ないな」


瞬きなしに、菖くんに見つめられる。そことなく、こそばゆくて。「なあに?」と、問うたら「さあ」と、はぐらかされた。


「お〜〜い。二人とも、練習再開するよ」

「ハイ!菖くん、行こっ」

「へーい」

間延びした返事が宙を舞う。

「(やる気ナシ())」

横目で眺めた。菖くんがこてんと首を傾げ、私を見やると、愉しげに話すのだ。

「みんなの青春守るために、文化祭の劇、頑張ろうね。一咲ちゃん」


べ、と赤い舌が覗く。
肩を揺らす後ろ姿に、私もべ!って返した。

そんな残暑の朝のお話———…