甘々とロマンス中毒

「衣装どう?」
(まき)ちゃんっ」

衣装班の牧ちゃんが私を抱きしめた。
牧ちゃんの手元で靡く鮮やかなチェリーレッドのフードが、頭に被せられる。

「ぶかぶか?」と尋ねられて、ううんと首を横に振った。「じゃあ、この色で決まりだね。一咲ちゃんの赤ずきん楽しみ。ふふ」朗らかに笑った牧ちゃんが「それから」と、視線を揺らめかせ、辿々しく菖くんに言う。


「雪村くん、言い方ってものがあるでしょ?もっと優しくしなきゃダメだよ」

「一生懸命してるから雪村くんがサポートしないと」

「そうだよね。一咲ちゃんに対してツンが多すぎ(お似合いとは言え、アレはちょっとなぁ。一咲ちゃんも冷めちゃうよ…雪村くん、ドンマイ)」


衣装班のメンバーが各々、口を突く。菖くんは場が悪くなってそっぽを向いた。

今朝、誓った“気合い入れるか”は、台無しだ。

菖くんの気合いは、私のポンコツ演技によって泡となり、消えちゃったの。わぁ。自分で“ポンコツ”って自覚すると、ほっぺがじんわり赤らんできちゃった。


「足、引っ張ってごめんなさい。もう一回だけ、付き合って…?」

「ラーメン替え玉券で交渉成立な」

「…うん!」


菖くんが私の鼻先を軽く押した。

よしっ。頑張ろう…っ!

台本を片手に持って。赤ずきんになりきって。
一人でセリフを言い並べていたら、強い力で菖くんに腕を引かれたの。