甘々とロマンス中毒

「一咲ちゃん!抑揚つけて、ゆっくり喋ってみて。それから、もう少し大きな声がいいかも(思ってたより棒読みだ…)」

「ウンッ」

「ビジュアルは超カンペキだよっ!後は演技を……」

勢いづいてた美羽ちゃんが、だんだんと口を窄めていく。最後は言葉を濁しちゃった。

「どうにか頑張ろうっ!」

その後ろから、こころちゃんが励ましてくれる。

「これ以上、付き合ってらんねえ。大根演技どうにかしろや」

一方、菖くんは毒を吐き捨てた。

「(だい……っ、こん!私の演技は大根…うそ)」


膝から崩れ落ちそうになる。
菖くんの盛大なため息と共に、ガーーンと頭上に重石が乗っかる。

「大根すぎて指導できなくね」演劇部の子に菖くんが言いやる。トドメを刺されて、私のHPは一気に急降下。ゼロになった。「今日は一旦、ここで終わりにしよーぜ」と、続ける菖くんの言葉が飛ぶ。

淡い桜色のふわふわも、シャボン玉のようにパチパチ弾けて。残ったのは私に纏う黒い渦だけ。

「(そんなに酷かったんだ。どうしよう。本番まで日が少ないのに…みんなに迷惑かけてる)」

演目『赤ずきんとオオカミ』

脚本、美羽ちゃん・こころちゃん。
主演、私。サブ、菖くん。

千花くんに推薦されていた『眠れる森の美女』は、第二候補の『赤ずきんとオオカミ』と多数決で同票だったから、それぞれで助演を務める千花くん、菖くんがじゃんけんをして。

結果、菖くんが勝ったの。

クールな千花くんが、眉根をぴくりと動かして「…運なさすぎだろ」と、肩を落としたのを私は見逃さなかった。

どちらにしても、役が当たってる私は降りることもできず、他の配役や美術班、道具班、衣装班などが決まり、今日に至ります。