甘々とロマンス中毒

朝食のホットケーキにたっぷりかかったクリームが、付いてたみたい。ティッシュで拭い取った。俯き加減に首を下げた私を、菖くんが追いかけて覗き込むの。


「なあ、咲。セリフ、頭に入れてきてんだろ?」

「いちおー…」

「居残り練とかマジで無理だから」
「(そう言う菖くんはどうなのよ)」

「このクソ暑い日に集まって劇の練習とかやってらんねえ。千花のやつ、マジで恨む」

「文句言わないの!菖くんがじゃんけんに勝ったからでしょ」

「あ゛ー……そうでしたね。オレが勝っても負けても役当たってる咲は、心構えが違うわ」

菖くんは一言多い。ついこの間、彼女にフラれた理由もコレが原因に違いないって、女の子の勘が働く。

「も〜〜。いいから黙って!」

唇をちょこんと尖らせた。

「私も居残り練、イヤだもん」

「ふーん、随分と強気じゃん。咲っぽくない。みんなの青春のために頑張ろー。って説教でもされるのかと思ってた」

「む…ぐぅ…っ」

溢した本音を一瞬の隙に掬われた。
頬がぷく、とリスのまあるい顔を作る。

「あやしーな。オレに隠し事でもある?」

「ハ…ッ(図星!)」


口籠り、唇の端をきゅっと結んだ。ゆらり。無機質な視線が送られて。私の背筋はしゃんと伸びる。

あやちゃんと放課後に会う約束してるから、遅くまで残れないの。

「(……とは、言えないもんなぁ)」

考え耽る私を他所に「まあ、いいか」と、菖くんが溢した。なにがいいんだろ?と、ハテナが心に置き去りだ。


「珍しく意見合うってことで。気合い入れるか」


屈託なく笑う菖くんが拳を突き出す。
つられて私も拳を作り、コツンとぶつけた。