甘々とロマンス中毒

“これ以上は言うな”そう、言いたげな苦い表情をのせた後、完全にそっぽを向いた。あやちゃんは痛いところを突いたようだ。
「容赦な〜…」伊吹さんが、ちぇっと舌打ち混じりに吐き出すと、背後から黒色のエプロンを身に纏った男性が顔を覗かせた。


「イブ、5卓にカシオレと生ビールお願い」
「おーけー」

声をかけられた伊吹さんは「お邪魔しました」と、仕事に戻って行った。

「わ、あやみくん来てたんだ。いらっしゃい」
「お疲れっす」

談笑する横で空気の如く黙り込んでいたら、あやちゃんが私に向かって「店長の(しん)さん」そう、さらりと紹介する。

「彼女?」

カノジョ…!

「アッ」

「?」

「……ぅ、ハイ」

「こんばんは。ゆっくりしていってね」


“彼女?”って聞かれて“はい”って答えて。それだけなのに、体の奥から熱が集められてぽかぽかする。首の裏まで赤く染め上がってるのかなぁ。

「(恋人になった現実味……が、少し帯びてきたような。そうじゃないような。ふわふわ……)」

心さんが離れた後、あやちゃんが頬杖をついて私を眺める。ぱち…っ。視線が交わり俯き加減になると、私の顎を慣れた手つきで、くい、と持ち上げた。

下唇に指の腹が柔らかに触れる。
甘い電流が走った。


「どした?」

「〜〜〜っ。ううん」